第7話 心(サイキック)の秘密(2023お題:アナログ巌流島/デジタル混入島)

その昔、人里離れた地で腕比べと、剣を交えた者らはいた。


名はムサシとコジロー。

闘いの地は巌流島。


果たして、取り決めの時刻に甚だ遅れたムサシに苛立つコジローのイライラパワーと、しかしながら厚かましくも2本の剣で闘いに挑むムサシの図太いパワーは激突している。互いは荒ぶるままに嵐を呼ぶと、嵐は島を覆って海もまたおおいに荒れさせた。


見かねて宮司は間に入っている。後に「サイキックお弁当」を授けることとなる社の宮司だ。

だが二人は聞かず、荒らされた海に海神ワダツミもまた困り果てると宮司と額を突き合わせた。そうして二人を心行くまで闘わせてやればよい、と別の場所へ移すことを決めたのである。


そう、巌流島ごとだ。


「コンパイルしたのよ」


三両で手に入れた別人の顔でお頭は言った。

傍らには定着の様子をうかがい鬼も浮いており、聞いて子分はぎょっ、とする。


「し、しー言語でやんすか」


うなずくお頭の新しい顔が剥がれることはない。


「デジタル圧縮。島もなにもかもいっしょくたに小さくして、お社の片隅に移したんだ。だがそんなことになっても闘う二人に、今もそこからとてつもないエネルギーは放出されている」


と子分はごくり、生唾をのんだ。


「そ、それが『サイキック』の正体。で、やんしたか」

「危機を知らせに行くだと?」


ふん、とお頭の鼻は鳴る。顔はすっかりお頭のものになったようだ。鬼も仕上がりに満足している様子だった。


「大ボラ吹きどもめ。伝書鳩こそ悪党よ。運ぶ暗号キーで圧縮を解くつもりだ。奴らサイキックをただの果し合いに戻そうとしてやがる」


言葉に子分もぎゅっと眉を寄せる。


「アナログ巌流島なんて、ただの島でやんす! サイキックがただの果し合いに戻れば、腹も膨れんでやんすっ!」


しかも解凍場所を間違えてしまえば、とんでもないことになるはずだった。


「どちらが闇か決着をつけてやる」


肩を切り返したお頭の目が遠く空を睨む。


「ですけどお頭ぁ、茶屋ではやり過ぎましたねぇ」


言うものだから、子分の頭へお頭のげんこつは落ちていた。


「うるせー、行くぞっ」

(本編のみ 約810文字)

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