第5話 激突! 夜明けのこむら返り(2023お題:眼鏡朝帰り/鋼こむらがえり)
「あ、あれはっ、高機動戦隊 オー・ブギョウ!」
木立にしがみついたまま、伝書鳩パーティの一人が声を上げる。
そう、浮かんでいるのは人ではない。人型を模した
(ここで唸れ、テーマソング!)
気付いた天狗の小鼻が地を剥ぐ勢いで大気を吸い上げた。その顔へ、合体ロボ、オー・ブギョウはやおらくるりと背を向ける。声を高らか天に響かせた。
必殺! 鋼こむら、か、えーりっ!!
一見、足がつったかのように見えるがこれこそ秘儀、後ろ回し蹴りだ。天狗の顔面にロボの足は炸裂する。鼻血は散ってばたばたと降り、のけぞり倒れた天狗に木々も折れると四方八方、飛び散った。
だが天狗はゆらり、ゆらゆら、鼻血を拭い立ち上がってみせる。
「なんと!」
「ハズした、のかっ……」
スケサクは目を見開き、伝書鳩パーティからも声はもれた。すると一人が「あっ」と指を突き付ける。
「一人足りないのですっ。あそこをっ」
促されて目を細めれば、確かに巨大な合体ロボは目をショボショボさせていた。
眼鏡がないのだ。担当する戦隊員は欠けていた。だから近眼だろうと老眼だろうと見えていない。おかげでシンをはずしたに違いなかった。
見抜いた天狗がここぞとばかり後じさってゆく。挙動のおぼつかない合体ロボは明らかに相手を見失っていた。
一体どうすれば。
あいだにも、天狗はひとたび胸へ大きく息を吸い込んでゆく。
声はそのとき空へと響いた。
「よっ、待たせたなっ。ちょいと調べもので乗り遅れちまったぜっ」
明け始めた空の向こうから、
とたん合体ロボの目は開く。眼鏡のガラスもキラリ、光った。
(唸れ唸れ、テーマソング!)
「天狗、お前にケリなんざぁ、必要ねぇ。立て札の文言はニセモノだ。このくもりなき眼鏡でしっかり暴かせてもらったぜ。本当の合言葉は、こうだっ」
半分ッ! ろうそくッ!
唱えた瞬間のことだった。天狗は足から霧となる。白く霞むと明けの峠に消えていったのだった。
(本編のみ 872文字)
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