一日目 夕食後 水嶋視点
一日目 夕食後 水嶋視点
パチスロを打つにあたり、無料エリアなどという生温い場所で打つ気はサラサラ無い。
興味があるのはその先にある魂がヒリつく戦いだけ。
と、意気込んで有料エリアへと足を踏み入れて数時間打っていたが、負けた。
途中までは景気よく打たせてくれるのに、此処ぞの場面でハズレを引かされる。
パチスロで負けたイライラが収まらないまま十八時過ぎに食堂に向かうと全員が睨んできた。
少し遅刻しただけだというのに、バカ女はグチグチと「あんな大きな音で放送が流れていたのに気が付かないはずがない」だとか文句を垂れるし、それに便乗する奴らも多かった。
黙ってろ。
俺は金が欲しくて此処に来たのであって、お前らと仲良しごっこをするために来たわけじゃない。
顔を合わせているだけでイライラが募り、大して美味くもない飯を一気にかき込んで食堂を出ようとしたら、今度はメイドに「十九時までは食堂にいてください」と言われた。
ふざけんな。
食べ終わったんだからコッチの勝手だろ。
「トイレに行く」と言って食堂を出た俺はトイレには行かず、そのままエレベーターに乗り込んで三階へと向かった。
自室なら誰も来ないだろう。
本当は誰もいない内に大浴場に行って、負けた分を取り返すために眠くなるまで遊技場に籠もろうと思っていたが、ゴチャゴチャと抜かされたせいでやる気が失せた。
施設案内の時に鍵を掛けずに出たため、当然自室に鍵はかかっていなかった。鍵をポケットから取り出さずに扉を開け、靴を脱ぎ散らかしてベッドへと倒れ込んだ。
まだ十九時前ということもあり、眠気は全く無く、携帯電話が無いため時間を潰す手段もない。
何か無いかと部屋の物色を始めると、テーブルの上に置かれたタブレットが目に入った。
「ネット繋がんのか?」
電源を入れてみたものの、タイトル画面には「物品注文」というタイトルのアプリが一つ。それしか入っていなかった。
アプリを起動すると、一番上に検索欄があり、衣類、生理用品、雑貨、玩具といった項目が並んでいた。
足りないものがあったらコレで注文しろということなのか。
特にすることも無いので、意味もなく色々な項目を眺めていると気になることがあった。
「工具が無い」
別に無くても困らないのだが、ドライバーやモンキーやバールといった工具に関しては、検索しても一つも見つからなかった。
他にもカッター、ハサミ、巻き尺、水準器、紙煙草、ライター。
パッと思い付いた物はとことん見つからなかった。
別にホテル暮らしに必要になるわけではないからどうでも良いのだが、ナットやワッシャーのような物まで取り寄せられるのに、肝心のボルトは注文出来ないというのには違和感しか無かった。
アプリを眺めるのにも飽きた頃、アプリ起動時の画面からずっとスクロールさせ続けたら「R18」と書かれたアイコンがあったので、とりあえずタップしてみた。
すると、急に馴染みのあるアダルトサイトのように、いわゆる”そういうモノ”が画面に並び始めた。試しにパッと目についたサムネをタップすると、お試し用の動画が再生され始めた。
「へぇ。こういうのもあるのか」
今は”そういう気分”では無いので吟味するつもりは無い。
お試し動画の再生を止めて他に何があるのか眺めていると、いわゆる”穴”だったり”棒”だったり”ゴム”だったりといったグッズも並んでいた。
「ハァ? 共同生活で使えってか?」
金さえ貰えれば文句はないが、この馬鹿げた実験を企画した奴らは何を考えているんだ?
大体の項目に目を通したので試しに何か注文してみようと思って煙草を探してみたが、紙煙草は注文出来なかった。
仕方なく、紙煙草の代わりになりそうな電子タバコを注文してみた。
ポーン。
部屋の何処かにあるスピーカーから電子音が鳴り、続けて機械音声が流れた。
『ご注文の品をお届けしましたので、受取BOXをご確認ください。受取BOXはベッドの横の壁にございます』
「受取BOX?」
言われた通りにベッドの横の壁を見てみると、そこには受取BOXと書かれたプレートと、その下に「開きますよ」と言わんばかりに四角に区切られた線が入っていた。四角の内側には指を引っ掛ける為の窪みがあった。
窪みに指を引っ掛けて引っ張ってみると、スルスルと簡単に四角に区切られた部分が引き出しのように動き、その中には電子煙草が入っていた。
「へぇ」
正直電子煙草は好きじゃない。吸っている感じがしないし、ニオイが好きじゃないし、何よりダサい。
届けられた電子煙草をテーブルの上に放り投げ、注文の流れが分かったので色々注文することにした。
とりあえず必要そうな物を片っ端から注文リストに入れ終わり、注文確定ボタンを押す直前にR18のグッズのことを思い出した。
「三人いる内の二人はゴチャゴチャうるさそうだが、一人は押せばイケるな」
今までの経験上、大人しい奴ほど”落としやすい”。遊び慣れていない人間は少し持ち上げればコロッと警戒心を解く。少し色気は無いが、”高い風呂屋”と比べれば悪くはない。
”遊び用”に買っておくか。
俺は”ゴム”もリストに入れてから注文ボタンを押した。
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