第32話 昼休み

 昼休み、いつものように京子は中井さんとともに俺たちの教室に来た。


「お邪魔します」


 いつもと同じく、佐藤のそばに中井が座り、俺の方には京子が座る。

 そして、今日も手作りのお弁当を出してくれた。


「なんか、距離近くない?」


 中井さんがすぐに気がつく。


「そうですか?」


 京子はそう言うが、明らかに近い。そのまま俺たちはお昼ご飯を食べ出した。


「今日は疲れたわ。朝から京子の惚気のろけがすごいのよね」


 中井さんが佐藤に言う。


「そんなことないですよ」


「いやいや、あるでしょ。良和君がああしたこうしたとか、もう、うるさいうるさい」


 そ、そうなんだ。何か嬉しいような恥ずかしいような。


「あの! それはあんまり言わないでもらえると……」


 松岡さんは恥ずかしがっている。


「ふふ、いいよね~」


「ああ、いいよな」


 佐藤が中井さんに相づちを打つ。


「だったら、お前らも――」


 思わず俺が口を出す。


「え? なに?」


 中井さんの鋭い視線に俺はひるむ。


「いや、なんでもないです」


 なにか、気まずい雰囲気に包まれた。佐藤が話題を変えようとする。


「そういえば、お前、行かなくていいのか?」


「ああ。もうしばらくしたら行くよ」


「え? どこか行くんですか?」


 京子が反応する。


「うん……。佐枝に呼び出されてね」


「何ですか、今更。私も行きます」


 京子は不快さを隠さずに言った。


「いや、さすがにそれはまずいだろう」


 佐藤が言う。


「彼女なんですからついていくのが当然です。」


「これは……修羅場だな……」


 佐藤が小さな声で言った。


 俺は京子を安心させようとした。


「大丈夫だから。俺はもう京子だけだから。安心して。決着を付けてくる」


「そうですか……」


 京子は不安そうだ。


 でも、もう俺は大丈夫だ。


「よし、じゃあ行ってくるな」


 弁当を食べ終えた俺は1人で屋上へと向かった。






―――――――――――――――――

 次回「決着」

 そしてエピローグ回で完結予定です。


 その後は新作を予定しています。



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