第26話 嫉妬(高橋佐枝 side)

 私、高橋佐枝は遠くで仲良く食事をしている4人、いや、良和と松岡さんの2人を見つめていた。


 今日の朝、絵里からあの2人が付き合いだしたのを聞いた私は驚いて良和を見てしまった。


 良和とは仲のいい友達でずっと居たい。そう思って、告白を受けなかった。一方、松岡さんは良和と恋人になることを選んだ。私が望んでいる姿はその関係では無い……はずだったが、2人を見ていると何か嫌な気持ちが浮かんでくる。


「ちょっと。顔恐いよ」


「え!?」


絵里の言葉に驚く。


「佐枝もそういう顔するんだ」


「私、そんな恐い顔してた?」


「うん。まるで……いや、なんでもない」


 絵里は言葉を濁した。


「何よ」


「言っていいの?」


「いいよ」


「そう。嫉妬してるみたいだったよ」


「嫉妬?」


「うん」


「ハハ、なんで私があの2人に……」


「でも、そうなんじゃないの? 仲良くしたかった人を取られちゃったんだから」


「……」


 そんなことはないはずだ。私は恋愛として好きというわけではないのだから。



◇◇◇



 あれから、何日か過ぎた。良和とはあれから何も話せていない。

 お昼になると、相変わらずあの4人の席は騒がしい。私はイライラしながらも、あの4人の席をいつの間にか見ていた。


 すると、松岡さんと目があった。松岡さんは笑顔で私に会釈してきた。それを見た私の中で何かが切れた。


 思わず机を叩いて立ち上がり、四人の方に近づいて行く。


「ちょっと!佐枝!」


 絵里が言うが、私は止まらない。佐藤君と中井さんが私を見たので、ようやく良和が気がつき私の方を見る。


「佐枝、何か用か?」


 良和の言葉にもイラッとさせられる。


「用が無きゃ話しかけちゃダメなの?」


「いや、そういうわけじゃないけど……。どうした?」


「……松岡さんと付き合いだしたってほんと?」


「ああ。そうだけど。佐枝には関係ないんだろ?」


 良和の言葉に私は動揺しつつもいらだっていた。


「あるわよ。私のこと好きって言ったよね?」


「ちょ、ちょっと佐枝。みんな見てるから」


 絵里が私を止めに入る。でも私は周りが目に入らない。


「確かに俺は佐枝に好きって伝えたけど、振ったのは佐枝だよな? 今更どうした?」


 良和もヒートアップしてきている。


「……最低」


 私は良和にそれだけ言うと教室から出て行った。


 屋上に向かう階段まで走り、そこで一人になっていると絵里がやってきた。


「大丈夫?」


「何が? 私は大丈夫よ」


「でも、泣いてるし……」


「え?」


 気がついたら私は涙を流していた。


「大丈夫だから。一人にしておいて」


「……わかった」


 絵里が去って、私は一人で自分の気持ちを考えていた。

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