第25話 昼食

 昼休みになると、いつものように中井さんと松岡さんが教室に来た。


 だが、いつもと違い、俺は弁当を持ってきていない。昨日、松岡さんから俺の分のお弁当も作ってくるとメッセージがあったのだ。


「あの……これ」


 松岡さんが自分のお弁当を出した後に、もう一個を取り出す。


「ありがとう」


 俺はありがたくそれを受け取った。


「え? 京子、堺君のお弁当作ってきたの?」


 中井さんが興味津々で聞いてきた。


「うん。一応、彼女なんで作ってみようかなって」


「え~、いいなあ。堺君、幸せ者だね」


「ほんとだな。ありがたくいただくよ」


 早速、松岡さんが作ったお弁当を開けてみる。色とりどりで見た目もいい。俺が好きなもので伝えた卵焼きや唐揚げも入っている。


「うわ、すごいな」


 佐藤が驚く。中井も騒いでいる。


「確かにすごいな。時間もかかっただろ?」


「しょ、初日なので……。いつも、こんなのは難しいと思うので期待しないでください」


「無理はしないで。時々でもすごくありがたいよ。じゃあ、いただきます!」


 食べてみると味もすごくいい。


「うまい! 松岡さん、やっぱり料理得意だね。あのときも美味しかったし」


「え、何? 何の時?」


 中井さんがめざとく聞いてくる。


「あ、一度ごちそうになったことがあって……」


「マジか。いつの間に」


 佐藤が驚いている。


「まあ、いろいろあってね」


 ごまかすしかないな。


「ふーん。どこでごちそうになったのかな?」


 中井さんが聞いてくる。こいつ、知ってて言ってるんじゃないよな。


「松岡さんの家だけど、一緒にアニメを見ただけだそ」


「へぇー。一緒にアニメね」


 中井さんが言う。


 松岡さんは顔が真っ赤になっていた。そういえば、あのとき、いい雰囲気になったんだった。

 俺はそのときから彼女を意識し始めたんだったな。

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