第23話 話

『今日、放課後に寄り道できませんか?』


 松岡さんからメッセージが届く。つい最近、佐枝に同じことを言われたような。

 そんなことを思い出しながら俺は返信した。


「うん、いいよ」


 放課後、また同じように待ち合わせる。そして、街中のチェーン店のカフェに入った。


「なんか話があるのか?」


 2人でコーヒーを注文した後、佐枝と同じように聞いてみる。だが、今回は何も期待はしない。


「私はちゃんと話がありますよ」


「え?」


 今日は何か話があるお誘いだったようだ。

 松岡さんはなぜか深呼吸をした。そして、俺を見て話し始める。



「私、堺君のことが好きです。付き合ってください」


「!?」



 告白だった。だが、俺はそれを受けることはできない。


「俺は……」


「分かってます。高橋さんのことがまだ好きって。でも、その想いがある限り、堺君はずっと苦しい思いをするはずです。私はそれを見ていられない。大切な人が苦しむ姿はつらいです」


 松岡さんはまっすぐに俺を見ながら言った。


「私と付き合っていけば高橋さんへの思いを忘れられるんじゃないかなって。いえ、忘れさせてみせます。だから、私とお試しでいいんで付き合ってもらえませんか?」


 お試しで付き合う。考えてもみない言葉だった。確かにこのままではずっとつらい思いのまま高校生活を送ることになる。それに松岡さんに好意が無いわけではない。話も合う。もし付き合っていけば楽しい思い出が出来るだろう。それで佐枝への想いが薄れれば、俺にとってはありがたい話だ。


「だけど、松岡さんにはメリットがあるのかな。俺とお試しで付き合っても――」


「私は堺君のことが本気で好きなんです! お試しでも付き合えるなら、幸せです」


「でも、その結果、最後はつらい思いをするかもしれないよ」


「かまいません。お試しということで覚悟はできています」


 松岡さんは強いな。その思いも強いし覚悟も強い。俺はそれをはねのけることはできないと思った。


「松岡さんの好意に甘える形になるけど、よろしくお願いします」


 俺は頭を下げた。


「こ、こちらこそ!」


 松岡さんも勢いよく頭を下げた。ゴン!という音が響く。


「痛!」


 テーブルに頭をぶつけたようだ。


「な、何やってるの! 大丈夫?」


「えへへ」


 松岡さんは照れたように笑った。その笑顔はとても可愛く、ドキっとさせられた。


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