第21話 後悔(高橋佐枝side)
後悔していた。良和と距離を縮めようと思ったのは急ぎすぎただろうか。
カフェから帰った私にさらに追い打ちをかけるように良和からメッセージが届いた。
『ごめん。まだつらいみたいだから、しばらく俺に話しかけないでいて欲しい』
何度もそのメッセージを見返す。夢であって欲しい。けれど何度見返しても現実だった。
また、良和に話しかけられなくなってしまった。
頭がくらくらとしてきた私はそのままベッドに倒れ込んだ。
──翌朝、路面電車に乗ると良和と出会った。
「あ……」
思わず声が出てしまう。良和も私に気がついた。が、頭を軽く下げた後、何も言わずにそのまま会話は無かった。
教室に入っても良和に話しかけられず、そのまま席に着いた。
「堺君と何かあったね」
隣の席の相澤絵里が話しかけてくる。
「うん。ちょっとね」
「痴話げんか? 早く仲直りしないと取られちゃうよ」
「そういうのじゃないから。それに……」
「それに?」
「……何でも無い」
私は何を言おうとしたのか自分でも分からなくなってしまった。
昼休み、良和はいつも通り、佐藤君と中井さん、それに松岡さんと一緒にご飯を食べている。そこを見る限り、彼はいつもと変わらぬ笑顔だった。
「ずっと見てるね」
「え?」
絵里の言葉に驚く。そんなに見ていただろうか。
「堺君が気になるんだ」
「うーん、そういうわけじゃないけど」
「へえ、気にならないんだ」
「……気になるわよ」
絵里のしつこさに思わず正直に言い返してしまう。
「おや、珍しく素直だね。じゃあ、私に話す気はある?」
絵里は中学時代からの親友だけど今まで良和のことは相談してこなかった。
もう自分でもどうしていいか分からなくなっているのだから、このあたりで話を聞いてもらう方がいいのかもしれない。
「今日の放課後、いいかな?」
「うん、わかった」
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