第20話 気持ち
俺は佐枝に放課後に寄り道をしようと言われ、つい期待してしまった。本当に馬鹿だ。だが、彼女のことになるとやはりどうしても気持ちを持っていかれてしまう。
家に帰ってもずっとぼうっとしたままだったが、そんなときに松岡さんからメッセージが届いた。
『今日のアニメ実況、楽しみです』
無邪気な言葉を見ても俺の心は弾まなかった。とてもそんな気持ちになれない。
『ごめん、今日は止めておく』
仕方なくそうメッセージを送る。
しばらくすると返信があった。
『電話、いいですか?』
俺がいつもと違うことに松岡さんは気がついたのだろう。
『いいよ』
そう返すとすぐに電話がかかってきた。
「堺君、何かありました?」
「たいしたことじゃないんだ。俺が一方的に期待しただけ。いつものことだよ」
「……高橋さん、ですよね」
松岡さんにはすぐばれてしまう。
「まあな。実は今日、放課後に寄り道しないかって言われてね。期待しちゃったんだ。でカフェに入って『なんか話があるのか?』って聞いたら『特にないよ』って言われて。ハハ、馬鹿みたいだろ」
「そんなことないです。だって、まだ忘れられないんでしょう?」
やはり、そうなんだろうか。
「そういう気持ちは捨てたって思ってたんだけどな」
「今の堺君、無理してるように見えます」
「そうかな?」
「はい。もう少し、自分を大事にしないと、どこかで折れてしまいますよ」
「そうかもしれないな」
松岡さんの言葉は今の俺に響いた。自分の気持ちを押し殺せば何も問題が無くなると思っていたが、少し格好を付けすぎていたみたいだ。結果的に佐枝にも悪いことをした。
「ありがとう。確かに無理していたみたいだ。これからはもう少し素直になるよ」
「……で、高橋さんのことはどうするんですか?」
「しばらく距離を置こうと思う。じゃないと、やっぱりつらいみたいだ」
「そうした方がいいと思います」
電話を切った後、俺は佐枝にメッセージを送った。
『ごめん。まだつらいみたいだから、しばらく俺に話しかけないでいて欲しい』
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