第19話 行動(高橋佐枝side)

 私、高橋佐枝は今の良和との関係にモヤモヤするものを感じていた。

 良和は告白を撤回し、前のように戻ってくれたはずだった。これが私の望んだこと。

しかし、何か壁のようなものを感じる。話せないという意味で彼が特別だった入学時よりも遠く感じてしまう。


 話すこともいつもどうでもいいことばかり。そうじゃないのに、と思ってしまう。

もう少し、間を詰めたい。それには良和との時間を増やすことだ。私は行動を起こすことにした。


 放課後、私はすぐに良和のそばに行った。


「ねえ。今日、今から暇かな?」


「え? 何かあるの?」


「ちょっと寄り道していかないかなって」


「……わかった」


 私たちは路面電車に乗り、通町筋で降りる。そしてチェーン店のカフェに入った。


「なんか話があるのか?」


 2人でコーヒーを注文した後、良和はいぶかしげに言った。


「え? 何も無いよ」


「そうなのか。わざわざ呼び出すから何かあるのかと思った。ハハ、ちょっと期待したりして俺って馬鹿だよな」


「そういうのは無いって言ったでしょ」


「だよな」


 二人の間に沈黙が流れた。


「でも、もうちょっと仲良くしたいなっては思ってる」


 思わず本音が出てしまう。良和は何も答えない。


「中学の時のような感じになりたいんだよね」


「あの頃とは違うだろ。いろいろと」


 良和は厳しい声で言ってきた。何が…何が違うんだろう。


「忘れてくれって言ったけど、ああいうこともあったしな」


「そうね。私は良和をそういう目では見てないから」


「でも、佐枝は俺ともうちょっと仲良くしたいんだろ?」


「それは……友達としてってことよ。何で分かんないかな」


「……俺の気持ちも少しは分かって欲しいよ。苦しいんだよ、俺だって」


 良和はそう言って立ち上がって帰ろうとした。


「ま、待って!」


「何? まだ何かあるの?」


「……何でも無い」


 良和はそのまま去って行ってしまった。

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