第17話 気づき
翌日の昼休み、松岡さんと俺の間にはどこかぎこちない雰囲気が漂っていた。佐藤と中井さんが会話で盛り上げても、俺たちはただ愛想笑いをするだけ。結局、そのまま昼休みは終わってしまった。
松岡さんとのぎこちない状態から、早く元の関係に戻りたい。また、アニメの話を楽しくしたい。そういう思いが募る。
──ん? なんか最近、同じようなことがあったような……
それで気がついた。俺と高橋佐枝の関係がまさにそうだ。俺が告白したせいで2人の関係は崩れてしまった。佐枝が嘘を言ったせいもあって、俺は深く傷ついたと思っていたが、佐枝も傷ついていたことにようやく気がついた。
そうか、俺が告白したことがそもそもいけなかったんだ。それに気がついた俺は、佐枝に声を掛けた。
「放課後、また屋上にいいか。2人で話したい」
「え?分かった」
驚いたようだったが、了承してくれた。
◇◇◇
(高橋佐枝 side)
──放課後。良和に呼び出された私は屋上に来ていた。
「良和、何の話? その……告白については、私はまだ……」
おそらく、また告白されるのだろうと思った。うやむやにしたままの告白の返事を返すことが出来ないままだ。
「そのことなんだけど、ごめん。俺が悪かった」
「え?」
突然謝られたことに驚いた。
「俺が告白してしまったからこんなぎこちない関係になったことにようやく気がついたんだ」
「そ、そうなんだ」
私は少し安心した。
「だから、もうあれは忘れてくれ。もう佐枝に恋人になって欲しいなんて言わないから。だから、また前のように気楽に話そう」
良和の言葉は私がずっと望んできたはずの言葉だった。これで前のように戻れるはずだ。
だけど、なぜか私に衝撃のようなものが走っていた。
「う、うん。ありがとう」
「はは。俺のようなやつが佐枝とつきあえるわけないよな。思い上がってたよ」
「……」
「なんだよ。突っ込み入れてくれよ」
「そ、そうよ。私、モテるんだから」
「だよな。分かってるって。もう迷惑掛けないから。気楽に行こうぜ」
「う、うん」
「なんだよ。ノリ悪くないか?」
「そ、そんなことないわよ。これからは前と同じように気楽に話すね」
「ああ。楽しみにしてる。じゃあ、今日はこれで」
「うん。また、明日」
良和は去って行った。私はただ、それを見送っていた。
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