第16話 家

「お邪魔します」


 俺は松岡さんの家に入った。


「遠慮しないで、こっちに座ってください」


 俺はリビングのテーブルの前に座る。


「なんか適当に見てていいですよ。着替えてきます」


 松岡さんはTVのリモコンを操作し、アニメのサブスクの画面にして着替えに行った。俺はリモコンを操作して何か見ようかと思ったが、まだ見ていないものここで見るのもどうかと思い、既に見たことがあるものを再生した。


 数分後に、松岡さんは部屋着に着替えてやってきた。なんとも、かわいらしい感じでいつもよりさらに幼く見える。


「へ、変ですか?」


「いや、可愛いと思う」


「!! そ、そうですか。あの、オムライスでいいですか?」


「あ、俺大好物だよ」


「そうですか。良かった」


 松岡さんの家に居ると思うと、緊張してアニメには集中できなかった。


「おまたせしました」


 松岡さんがおいしそうなオムライスを持って現れた。


「おー!すごい!」


「お口に合わなかったらすみません。食べてみてください」


 一口食べると、懐かしい感じのまさにオムライスという味だ。


「美味い。俺が好きなタイプのオムライスだよ」


「ほんとですか? 良かったー」


「松岡さん、料理得意なんだね」


「……親が遅いことが多いんで自然に上手くなったみたいで。オムライスが一番自信あります」


「うん、ほんと美味いよ」


「嬉しいです」


 ご飯を食べ終わり、俺たちは一緒にアニメを見ることにした。


「『四人の花嫁』見返そう。いろいろ語りたいし」


「はい」


 俺たちは一話から見返しだした。


「これが伏線だったんだ」


「そうです。だからお守り持ってる子は……」


 見返すと新しい発見がいろいろあって、松岡さんが教えてくれる。最終回がとても楽しみになってきた。


 そして、10時になり、最終回が始まった。2人は食い入るように見始めた。


 感動の最終回が終わると、二人とも泣いていた。


「あー、良かったです」


「いいよねえ。分かっては居たけど、ちゃんと結ばれて」


「うんうん、ほんと良かったです」


 俺たちは感想を言い合った。


「あー、私も彼氏が居たらなあ」


 ふと、松岡さんが言った。


「すぐできるんじゃない? 松岡さんなら」


 こんな可愛い子がモテないわけは無いだろう。


「そんなことないです。それに好きじゃ無い人にモテても意味ないですから」


 そう言って俺を見てくる。


 この雰囲気、まさか、告白では。

 俺はドキドキしながらも不安になった。もし、告白されたらどうしたらよいのだろうか。


 俺は正直、恋愛についてトラウマを抱えてしまっている。松岡さんに好意は無いとは言えないが、恋愛的なものなのか、自分でもよく分からなかった。正直なところ、今の関係が続いて欲しい。


 ──告白されたらやっかいなことになりそうだ。


 そんなことを考えてみると、松岡さんの電話が鳴り出した。


「はい……。うん……わかった」


 電話を切ると松岡さんは慌てて言った。


「ごめんなさい、親が帰ってくるっていう連絡で」


「そ、そっか。わかった。俺は帰るね」


「はい、また明日」


俺は慌てて家を飛び出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る