第9話 帰り道

 お昼休みが終わり、5限目の休み時間に俺のスマホに松岡さんからメッセージが届いた。


『今日、一緒に帰れませんか?』


 俺を心配してくれているようだ。


『いいよ。また4人で帰る?』


『できれば、2人で』


 二人か。


『アニメの話もしたいので』


 そう言われると断れない。それに佐藤と中井は帰る方向も違うし迷惑はかけられないか。


『わかった。楽しみにしてる』


 俺は松岡さんと2人で帰ることにした。



◇◇◇


 俺と松岡さんは校舎を出てすぐのところで待ち合わせた。


「すみません、急に」


「いや、こちらこそだよ。行こうか」


「はい」


 そして、校門を出ようとしたときだった。


「良和」


 急に声がした。高橋佐枝がそこに居た。


「や、やあ、高橋さん」


 俺が少しうろたえた声を出すと、松岡さんが俺の前に出て佐枝との間に入った。


「あなたが高橋さんですか?」


「そうだけど。あなたは隣の組の松岡さんね」


「私のこと知ってるんですか?」


「いつも教室に来てるでしょ。名前は良和に聞いたから」


「そうですか。それで、堺君に何の用ですか?」


 松岡さんがこんなに険悪な話し方をするのは初めて見た。


「ちょっと、話をしようと思って……」


「堺君は話はしたくないようですよ。ね?」


 松岡さんが俺を見る。


「い、いやあ。その、なんて言うか……」


「そういうことですので。じゃあ、私たち急いでますから」


「ちょ、ちょっと!」


 松岡さんは急に俺の腕を取って引っ張っていく。俺は引っ張られるまま、校門を出た。


「なんなんでしょうね、あの人」


 松岡さんはお怒りモードだ。


「分からないけど、悪い人じゃないから……」


「でも、堺君のトラウマですよね?」


「そうだけど……」


「これからは近づいてきたら私が守りますね」


「いや、そんなことをしてもらわなくても……」


「迷惑ですか?」


松岡さんが上目遣いに尋ねた。


「迷惑じゃ、ないけど……」


「じゃあ、毎日一緒に帰りましょう。話したいこともたくさんありますし」


 こうして俺たちは毎日一緒に帰ることになった。

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