第6話 喫茶店

 放課後、俺たちは4人で帰っていた。佐藤が言う。


「街中によく行く喫茶店があるんだけど、そこでいいか?」


「俺は帰り道だからいいぞ。松岡さんは?」


「わ、わたしも帰り道だから大丈夫です……」


「よし!行こう!」


 そう言って、歩き出し、佐藤と中井が前に並ぶ。その後ろに俺と松岡さんが並んだ。


「あの二人、こうやってよく放課後デートしてるのかね」


「そ、そうみたいですね」


「あれで付き合ってないって言ってるけど、もうほとんど付き合ってるようなもんだよな」


「ですね。でも……」


 松岡さんがぽつんと言った


「え? 何?」


「いえ。やっぱり、はっきりと告白してOKにならないと付き合ってるとはならないんじゃないかな……」


「そうか。そうだよな……」


 ──俺は高橋佐枝に告白したときのことを思い出していた。


「わ、私、なんか偉そうなこと言ってすみません。全然経験無いのに……」


「え、そうなんだ。松岡さん、可愛いから結構告白とかされてるんじゃないの?」


「か、かわいくなんて……。告白されたこともしたこともないです」


 松岡さんは真っ赤になっていた。こんなに可愛いのにそうなんだ。意外だ。


 俺たちは路面電車に乗り、熊本市の中心部に向かう。水道町電停で降りると百貨店の中に佐藤と中井が入っていく。そこの2階にカフェがあった。


 カフェに入ると当然のように佐藤と中井が横に座る。俺と松岡さんも横に座った。周りを見ると年齢層は少し高めだ。コーヒーの値段も高い感じがする。


「ここ高校生が来るところなのか?」


 俺が言うと中井が答える。


「だから、ここに来るのよ、同じ高校の生徒はまず居ないでしょ?」


「なるほど。他の生徒に見られずにデートできるってわけか」


 この2人は一緒に居るところを見られてカップルと思われるのが嫌なんだろう。


「まあね。今日のようなダブルデートでも問題ないでしょ?」


「今日はダブルデートじゃ無いだろ」


 俺が否定する。


「今度ほんとにやろうぜ。ダブルデート」


「いいねえ!」


 佐藤と中井が盛り上がっている。


「お、おい……。松岡さんが迷惑だろ。俺とカップルなんて」


「わ、私は……行きたいです」


「え?そうなの?」


 コクリと松岡さんは頷いた。


「じゃあさ、連絡先交換してグループ作ろう!」


 中井が言い出し、俺たちは連絡先を交換した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る