第3話 お昼

 翌日から授業が始まった。

 俺は佐枝のことは忘れようと必死に授業に集中したせいか、あっという間に午前の授業は終わった。


 昼休みになるとすぐに佐藤が話しかけてきた。


「なあ、一緒に食べようぜ」


「ああ、いいぞ」


 机を向き合わせると、佐藤は頭をかきながら言った。


「実はな、他のクラスから一緒に飯食べるやつが来るんだけどいいか?」


「あ、そうなのか。別にかまわないぞ」


「悪いな。もうすぐ来ると思う」


 他のクラスに友達が出来るのも悪くない。教科書の貸し借りも出来そうだ。


 そこに女子生徒2人が入ってきた。1人は派手目な感じ。茶髪のボブで、笑顔が明るく、おでこ全開。もう一人は対照的におとなしそう。黒髪のセミロング。前髪も長めだ。


「義人!来たよ!」


「お、お邪魔します……」


 え、もしかして、この2人が一緒に食べる2人なのか。


「お! 真美、来たな。 堺、紹介するな。俺の幼なじみの中井真美だ」


「どうも、中井です。真美って呼んでもいいよ」


「あ、はじめまして。堺良和です」


 戸惑いながら、何とか答えた。中井さんは見た目通り元気な子だ。


「で、そちらが新しく出来た友達か?」


 佐藤が言う。


「そそ。松岡京子ちゃんだよ」


「は、はじめまして……松岡京子です」


 おどおどした感じの子だ。


「席が前後で仲良くなったらしい。俺たちと同じだな」


「そうか。なんか緊張するな」


「まあ、最初はそうだろうけど、これからは仲良くしようぜ」


 そうやって、俺たちは一緒に昼飯を食べることになった。




「いやあ、数学やべーな」


「そう? 私は古文の方が……」


 佐藤義人と中井真美は幼なじみらしく会話が進む。

 それに対し、俺と松岡さんは無言だ。ここは俺の方が先にしゃべりたい。でも、何を話していいか分からない……と考えていると松岡さんに先を越された。


「あのー、お二人はおつきあいされているんですか?」


 松岡さんの素朴な疑問に佐藤と中井のおしゃべりが中断した。


「「つきあってないよ」」


「いや、息ぴったりだな」


 思わず、俺が突っ込んでしまう。


「ハハハ、腐れ縁だからね」


「まあな。俺と真美はもうずっとこんな感じ。付き合うとか以前の問題で、全然男女意識してないから」


「そうそう。幼稚園から高校までずっと同じだもんね」


「学力も似たり寄ったりだからな」


「そ、そうなんですか。お二人の仲が良さそうなのでつい……」


「幼なじみなら、こんなものじゃない?」


 それを聞いて、俺の心の傷口が痛んだ。俺もあんなことを言わなければ、今頃は佐枝とも楽しく話せていたのだろうか。


「私は幼なじみが居ないのでよく分かりません。何かうらやましいです」


 松岡さんが言った。


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