第2話 再会
それから高校入学までの間に俺は感染症から回復し、失恋の痛手からも回復しつつあった。何よりも時間が味方だ。彼女に会わないことによって、俺も学校に行く気力が出てきた。
ただし、高校入学でこの失恋がリセットされるわけでは無い。なぜなら、高橋佐枝も同じ高校だからだ。俺は佐枝と同じ高校に行こうと、少し偏差値が高いこの学校に入るために勉強に励んだ。その結果、晴れて合格したわけだが、今となってはその努力は無駄になった。それどころか、心の傷をえぐられる結果である。
とはいえ、同じクラスになると決まったわけでは無い。5クラスあるこの高校なら、確率的には20%だ。そう思いながら校門をくぐり、校舎に入ったときに、張り出されたクラス分けの表が目にとまる。残念ながら20%を当てたことが分かった。そう、佐枝は同じクラスだ。
愕然としつつも俺は1年3組の教室に足を踏み入れ、指定された自分の席に着こうとした。
「おい、大丈夫か?」
ふらふらしている俺を見て、後ろの席の男子生徒が話しかけてきた。
「何とかな。ちょっとめまいがしただけだ」
「大変だな、何かあったら俺に頼れ。俺は佐藤義人だ」
「ありがとな。俺は堺良和」
「お! よしよしコンビだな」
佐藤が笑った。
「堺、俺は同じ中学のやつがあまり居ないから仲良く頼むな」
「俺もそうだよ」
こうして、気の合う友達が出来た。
周りの席を確認すると、高橋佐枝は既に席に着いていた。良かった、遠い席だ。その隣には同じ中学の相澤絵里がいた。佐枝の親友だ。こいつも同じクラスなのか。
佐枝の方を見ていると、俺に気がついたのかこちらに近づいてきた。
「良和、えっと……」
「ああ、高橋さん。おはよう」
俺は全ての精神力を振り絞って佐枝の方を向いた。
「あ、おはよう。もう大丈夫なの?」
「ああ。何も心配いらないから」
何事も無かったかのように俺は言った。
「そう」
それを聞くと、俺は佐藤の方に向き直り会話を続けた。
「それで、さっきの話だけど……」
そうしていると高橋さんが去って行くのが分かった。
「お前、彼女と知り合いか?」
「ああ、同じ中学だったんだ。俺、中学の最後に体調崩して卒業式も出てないから心配してくれたんだろう。ほら、例の感染症で」
「そりゃ大変だったな。俺もあの感染症にかかったときはさあ……」
そこからは感染症話で盛り上がった。
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