告白失敗 - 告白する前に彼氏が居ると分かってしまった
uruu
第1話 告白失敗
春の日差しの中、俺は真新しい制服に身を包み、入学したばかりの高校に行くため市電に乗っていた。
学校に行くのも久しぶりだ。中学校の最後に俺は学校に行くことが出来なかった。
その理由は告白に失敗したからだ。俺が小学校からずっと仲良くしていた幼なじみとも言える少女、高橋佐枝。明るめの長い髪に、すらりとしたスタイル。明るく誰とでも話せる彼女は、あまり社交的では無い俺ともよく話してくれていた。俺が男女を問わず最も話していたのは彼女だ。
そんな関係だからいつの間にか彼女のことを異性として好きになっていた。おれは中学のうちに告白しようと考えていた。そんなとき、俺は不穏な噂を耳にする。佐枝に彼氏が居る、いう話が聞こえてきたのだ。だが、そういう気配は無かったし、きっとただの噂だと思っていた。
そんなことを考えていたためか、中学生活が終わる頃、佐枝と雑談している中でふと言ってしまったのだ。
「あー、俺も彼女作りたいなあ」
「まあ、良和では無理だね」
俺の気持ちも知らないで佐枝は茶化すように言った。
「何でだよ。俺だってその気になれば彼女の一人や二人作れるから」
「なんで二人作ってんのよ」
「そういう佐枝だって、彼氏居ないだろ?」
俺はつい、噂の真相を確かめたくなった。
「馬鹿にして。い、居るから」
「え!?」
俺は予想外の返答に驚いた。噂は本当だったのか。
「そうだったんだ。知らなかった」
「……そうだよ。私モテるんだから」
俺の心はすっかり折れてしまった。
「ご、ごめん……。実はさ、俺、佐枝のことが好きだったんだ」
「え?」
「あはは、言っちゃった。彼氏が居るのにこんなこと言ってごめん」
「私こそ、なんかごめんね……。だから、良和とはつきあえない」
いたたまれない空気になって、俺は彼女の前から走り去った。
その日、俺は一睡も出来ずに翌朝を迎えた。朝からフラフラしながら部屋を出ると、あまりにおかしい態度に心配した親が熱を計ったら高熱が出ていた。学校を休み病院に行くと感染症にかかっていることが判明。強制的に数日休むことになった俺は卒業式も欠席し、そのまま彼女と出会うことは無かった。
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