第14話 おかえり

あのとき僕はもう自分の至らなさにいっぱいいっぱいだった。


これまではごまかし続けてきてたから…

僕がダメだった、だけどあの人もダメ、だけど社会もダメ、だけどあの風潮もダメって。


そうやって中立を盾にした偏見で、自分に免罪符をくっ付けてかばってきたけど…。


けどもう臭い自分に蓋をするのも限界がきて…、心はもうとっくにか細くなってたけど、もう避けてばかりじゃ嫌だと思って…、だからあのときその蓋を開けたんだ。

ただの努力足らず・我慢足らずっていう事実の蓋を。それが激痛だった…


「見るな!」ってご近所の長老さんにも言われたことはあるよ。

でも生活していると、まわりの生き物さん達と接してると見えちゃうんだよ。

みんな真面目で賢くて、優しくて守るものをちゃんと守ってるって。

そうじゃない生き物さんもいたりはするけど、それもひっくるめて自分の生き方は仲間外れみたいで…。


ほんと、心細過ぎた、社会やみんなを目にする度に。


だからね、だからビクビクしながらもゆっくり突き刺していったんだよ…、、自分の過去を。


そしたら急に全身に痛みが走って、

「あぁもう死ぬんかな」って思ったら目が開いて、目の前に僕がいたんだ。僕というか、僕が描いた理想の自分が。


彼が来てくれたのか僕が呼んだのかはわかんないけど、その瞬間反射的に彼に謝ったら彼が僕と合体しちゃって。


今まで彼を思い浮かべては凹んだり頑張ってみたり、目がウルウルして自暴自棄になったりしてきたけど、目の前にいたこともなければ、ましてや触れたこともないのに…。


しどろもどろになって、動揺しながら「おかえり」って馬鹿なこと言っちゃって。

そう言った自分にまた焦って、、とにかくこれまでのこと謝んなくちゃと思って、、して、そして、僕も状況が分かんないけど関係を説明しなきゃと思って頭の整理もつかないまま言葉を繋いでいったんだ。


すると状況を呑み込んだ感じの彼はこんな現実の僕に落胆してる様子ではあったけど、あったんだけど自分の事を悔いだして…。


だから絶対それは違うし、それもこれも全部僕が悪いんだって説明して、それで、、

それで、「ありがとう」って、「僕は大丈夫だよ、大好きだよ」って言おうと思ったんだ、、そしたら…。



急に大雪が来た。

寒い冬の始まりのように空から雪がわんさか転げ落ちて、身の危険を感じるほどだったんだ。


まわりの皆は既に襲来することを予測してて十分なねぐらを準備してたけど、僕はというと…。


それで慌てて…。話どころじゃなくなって…。

とにかく手当たり次第の物で自分を守ろうと躍起になって。

だけどその場当たり的なあがきも役に立たなくて、、一瞬で目の前が真っ白になって雪に埋もれてしまったんだ。



もう、それは何時も変わらぬ僕を象徴するような出来事だったと思う。

自分を守れず、憧れの自分をも守ってあげれない存在…。


冬の嵐が彼をさらってった…、いや、違う!


違う、、、予測できた事態に気を取られて、一番大事なもの退しりぞけてしまったんだ…。

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