第8話 おかえり

彼はどこかヌケた生き物で、不定期に大小いくつかの苦悩を抱えていた。

時折自ら逆光を浴びるような判断までをもしているようだ。


…なるほど、、もし仮に僕を理想としていると彼がいうのなら、それらが僕の背中を見失う大きな理由だな……


それに比べてまわりの植物達はどれも立派なもんだ。

常日頃身の安心を優先しているんだろう、そのたたずまいに安心感や清潔感が見て取れる。


そうしてしばらく雑草の彼のことを考えけっていると、フと気がついたことがあった。


そういえば、彼のような雰囲気の生き物をこれまであちこちで見た┅、気がする。

一見平静な顔をしてはいるけど、どこか目はうつむいているような、取り繕っているような感じがした。

あれも彼と同じような心境で生きる者なんだろうか。

安定しているようで不安定。安心できるようで不安な彼のように…。


それにしてもどんなことがそうさせているのだろう、、僕を理想と言うのなら、ただ僕の痕跡を辿ればいいだけなのに、立ち止まざるを得ない、鈍足にならざるを得ない具体的な理由は何なんだろうか?


とにかく彼の心は孤独そのものだった。

その慢性的な孤独が些細な出来事でも悲哀感ひあいかんとなって現れ、彼は時折僕を羨んでいる。


なんだか僕に似た雑草かれが持つ喜怒哀楽すべてが、まるで観客のいない舞台に思えた。

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