第5話 おかえり

『え゛っ…』


苦痛の声を発したそれは、転んだ原因となったそれは、「僕」だった。

いや、「僕」に似てる生き物、、と言った方がいいのか…。

それは雑草の形をした、僕だった…


『え゛っ… …え?』と驚くと、

僕に似た雑草が、「ごめんね」と申し訳なさそうに言葉を発した瞬間、瞬く間に僕に似た雑草に吸い込まれていく感覚を覚えた。


そして何が起きたのかも分からず視界が静止すると、僕の見る視界は雑草の背丈に変わっていて、今度はどこからともなくバツが悪そうな声が聞こえてきた。


「ごめんね…、おか、おかえり…」


どうやら、僕はこの雑草に乗っ取られた?のか、吸収されたというのか、合体してしまったようだった。

さっきまでいたはずの僕が、視界の前にいないんだから…。


何がなんだかわからず辺りを見渡していると、少しの静寂の後僕に似た雑草かれが語りだした。


「き、、きみはね、僕なんだ…ごめんね、、僕…なんだ…。きみは僕の中にある、、、

僕の、僕の支え…。」


…ハァ?なんだそれ?…

と言いそうにになる声を必死で押し殺し、黙って聞き続ける。


その内容は、手短に言うとこういう事だった。

僕に似た雑草かれが描く、将来像や理想像〗

…が?僕のようだ。


そんなことをいきなり聞かされて、『はいそうですかリョ』とはなりはしない。

ただ、まぁ吸い込まれているわけだから百歩譲って「自分」としても、ホントの自分がこの雑草とは認められない。


そこでヨシ今度は自分の番と、彼が何者なのかを探ろうとしたその時、不思議なことに喋ることなくドクドクと流れるように彼の過去や性質が僕の中になだれ込んできた。


その一連の流れさえ僕には理解が追いつかない。

だけどそれによって一通りわかったことは、どうやら彼は理想を歩いてる僕への恥じらいを持っていて、なにやら両親や関わる人達への申し訳なさも抱えている。

その申し訳なさは、思うように生きたいという芯が要因のようだ。


…なんかダッセぇ野郎だなぁこいつぁ…と脳裏に浮かぶ。


どうやら彼は、度々葉並びの悪い状況を選択し、遠回りな生き方をするような生き物のように思えた。

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