第2話

 ちょうどその日。


 偶然にも、道徳の授業で人生と命を勉強していた。


 勉強とは言っても、ほとんど発表会みたいなものだ。各々が自分の意見を述べるという至ってシンプルな授業システム。


 誰もが倫理観や道徳観に則った、テンプレートを語るばかり。

 内心飽き飽きしていたのだが、一人面白い意見を延々と説いた生徒がいた。


 名前は、丘野おかの 夜須八やすや



 彼がいうには、『人生や命に意味を見出だすのは、生前生きていた人間が死んだ後にやる事後処理である』とのこと。


 だから。


『人生や命やらをこの道徳の授業で語っていること自体、無意味でしかない。僕らは死人じゃあないんです。冥土の土産話のように語るのは、気持ち悪いので止めましょう』


 と、クラス全員(私は除いて)から非難の目が向けられてもお構い無しだった。


 ははぁ。やっぱり面白い子だったんだなーっと。

 私は一人笑みを溢した。



 ……残り一日を迎えて、どうやら私はしたい事ができたらしい。 



 それは傍から見れば、あまりに幼稚な事で、標的になった当人は大迷惑なこと。


   

 私は残り一日の命の使い方を、間違っているのかもしれない。


 だって、この世界には意外と楽しいものがたくさんあるし、面白い人たちがいっぱい居る。


 それでも、私は自分勝手に選ぶ。


 

 丘野 夜須八。

 彼に、私の残り一日を費やそうと思う。 


 


 


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