ダンジョン&アパートメント

ムネミツ

  ダンジョン&アパートメント

 「家賃も水道光熱費もゼロって、うそだろ!」


 青いチュニックの下に黄色のシャツとズボン。


 靴はブーツ、両手はブレーサータイプの手袋。


 短い黒髪に黄色みのある肌で勇者ルックの東洋人の少年。


 勇者タロウは、灰色の石造りの通路で刀身が青く光る両手剣を振るい

スケルトンを切り捨てながら叫んだ!


 「嘘じゃありませんよ♪ 生活品はモンスターのドロップ品で賄えます♪」


 緑のロングヘアーで黒いローブに魔女帽子と魔女ルックの眼鏡の美少女が微笑む。


 「買い物や外に遊びに行く時は、モンスターを攻略する必要がありますよね?」


 モンスターを倒し終えて、ゴールドと経験値を手に入れたタロウ。


 剣を鞘に納めて、魔女ルックの美少女のミドリへ問いかける。


 「あ、大丈夫ですよ♪ 地下三階に地下鉄ウキョット線が引かれてますから♪」

 「いや、地下鉄引いてるんかい!」

 「ええ、ナシヤーマの様な田舎ではないでしょうが王都では地下鉄でダンジョンへと行けるんですよ♪」

 「田舎をディスらないで! 駅チカって、近いじゃなくて地下って事か!」


 村役場の正規職員であるミドリと漫才をしつつダンジョンを進むタロウ。


 「うわ、広い空間に出たな? 何か周りに露店が出来てる?」

 「こちらが地上一階、エントランスホールです♪」

 「いや、何か普通にダンジョンの入り口の露天市だよな?」

 「田舎風に仰るならそうですね♪」

 「だから、田舎ディスるな! ここだって、王都の都心からなら田舎でしょ?」

 「ひどい! 都下をディスらないで下さい!」


 ドーム状の茶色い岩窟風エントランスで言い合う二人。


 タロウの言う通り、ドワーフやら小人やら様々種族が店を出していた。


 「まあ、ダンジョンの中にあるアパートなので攻略だけに来る方もおられます」

 「いや、セキュリティ大丈夫なの?」

 「モンスターに罠、そして住民の冒険者様がセキュリティです。 レッツ自警♪」

 「何言ってんだあんた?」

 「まあまあ♪ そこのフードコートで、バッファロー丼でも食べてから内見を進めましょう♪」

 「いや、もうわけがわからないよ!」


 エントランスの一角にあった簡素なフードコートで、バッファローの牛丼を食いつつ説明を受けるタロウ。


 「いや、内見ってもっと安全なんじゃ?」

 「お金のある方の住まい探しならそうですね♪」

 「……くそ、おのれ公務員!」

 「正規職員への昇格を目指してくださいね♪」


 タロウはミドリにバッファロー丼定食特盛をおごられて、悔しかった。


 都会の格差社会にいつか打ち勝って見せると心に決め、内見と言うダンジョンアタックに挑んだタロウ。


 地下一階、墓地フロア。


 「何か色んな宗教の寺院があるな?」

 「蘇生や回復、冠婚葬祭はこのフロアですね♪」

 「地下なのに空があるんですが?」

 「ダンジョンはフロアの一つ一つが異世界です♪」


 複数の寺社や霊園が並ぶ空間を進むタロウ達。


 彼岸花など縁起がちょっと怖い花が道に自生していた。


 所々に家屋がいくつかあった、住めるのだろうか?


 「住むなら、ああいった小屋やら家やらに住めるんですか?」

 「はい、アンデッドなどが平気ならこのフロアになさいますか?」

 「いや、呪文やらお香やら死臭やらがちょっと?」


 すぐに地上に出られそうだけど無いかなと太郎は思った。


 「では、次のフロアへ参りましょう」


 地下二階、草原フロア。


 「……いや、何で青空と草原?」

 「草が生えますよね、文字通り♪」


 地下二階は綺麗な青空に緑豊かな大地、ダンジョンの中は本当に異世界だった。


 「畑とか作って過ごすには良さそうだな、田舎を思い出す」

 「住民の中には、バッファアローの牧場を作っている方もおられるようですよ♪」

 「いいや、どんだけバッファロー推しなの?」

 「バッファローは、肉もミルクも美味しいんです♪」

 「で、ここも家とか部屋があるんでうか?」

 「はい、ご案内いたします♪」


 ミドリに付いて行き、エリアを歩く太郎。


 自販機とかもあったり、不思議な空間を進み庵と言うべき古風な平屋を見つけた。


 「うん、あの平屋で良いです」

 「ああ、以前侍の方が住まわれていた所ですね♪」

 「以前の住人の方は?」

 「上のフロアにお墓があると思いますよ♪」

 「お邪魔します」


 冒険者ならそう言う事もあるだろうと割り切り、平屋に入る。


 中は綺麗で一人で暮らすには十分な広さだった。


 畳の部屋で箪笥などの家具も付いていた。


 台所や風呂は自分で火起こしがいるタイプ。


 トイレは水洗、魔導ネット魔導電話も繋がると好物件だった。


 「他の階も気になりますが、ひとまずここに決めたいと思います」

 「はい、それではこちらが鍵となります」


 ミドリが虚空から、この庵の鍵を召喚してタロウに渡す。


 タロウは住処を手に入れた、人生にやる気を出した。


 勇者タロウのダンジョン暮らしの日々がここから始まるのであった。

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ダンジョン&アパートメント ムネミツ @yukinosita

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