2-2
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何事も経験だと友人達に
その無関心ぶりに相手が
だが今回は──今回ばかりは、失敗する訳にはいかないのである。
ミリエッタへの
これまで女性に対して何の興味も
そういえば以前騎士仲間が、「イケそうだと思ったら、一気に行った方がいい」と飲みの席で話していた。
イケそうかどうかは不明だが、押すなら今しかない、という確信はある。
婚約の申し込みが保留となったため、今回のデートを
帰宅後すぐ公爵夫人である母に相談し、観劇はどうかと提案されたため、
早めに到着出来れば観劇後の夕食だけでなく、観劇前に女性が好みそうなスイーツを
一緒に過ごす時間は、長ければ長い程
善は急げと、王立劇場近くで飲食可能なスイーツ専門店を物色しに行ったが、ミリエッタの好みに合いそうな店が見つからない。
早々に予約を
さらにドラグム商会を呼び出し、ミリエッタが好きそうな珍しい紅茶を数点提案させるが、如何せん値段が高い。
それなら差額を
加えてスイーツ店の改装も必要なため、トゥーリオ公爵家
一階は現在営業中、しかも間に合わないので二階のみを改装し、
同時進行で、スイーツが得意な公爵家の料理人に声を掛け、オーナーパティシエとして
どんなに腕が良くても、男はダメだ。
あまりの美味しさに、ミリエッタが話し掛けてしまうかもしれない。
運が良ければ女性ならではの目線でアドバイスが
なお、本件については父から事前に
ご
……料理人は騎士同様、序列の厳しい体育会系。
特訓は深夜にまで
「全然
「ハイッ!」
「成功
「ハイィッ!」
「いいぞ! これだ、この味だ!」
「ぅおお、ありがとうございます! ジェイド様、私ついに夢が
さりげなく同じ動作をすると、相手に親近感を
マーリンとの激しい特訓でほとんど
さてどうするかと思い悩み、ミリエッタをよく知る者から入手した定期連絡の後段……『先の御予定に係る留意
知識欲
内向的で遠慮がち、自信がない彼女は要望があっても言葉に出すのを控えるだろう。
少なくとも二人の距離が縮まるまでは、わずかな反応も
また男性に慣れておらず恥ずかしがり遠慮をすると思うので、小さなときめきを大事にしながら嫌がられない程度に触れ合う場を演出することで、婚約への動機づけに繫がるのではないか、と記されている。
参考資料として
騎士としての経験上、理論は実地により初めて生きたものとなるため、額に入れて飾っていた
入念な準備とシミュレーションも終え、満を持して準備をしたはいいが、このまま夜々中に眠りに落ち
ジェイドは
その足で
緊張が解けてきたのが嬉しくて、夜会で目が合った話をすると、ジェイドに嫌われ睨まれている気がして怖かったと告げられる。
あまりのことに驚いてつい素に戻ってしまったが、この誤解は何を以てしても解かねばと、ミリエッタの手を取りそっと口付けした。
手の甲へのキスは『尊敬』や『敬意』を示すためのもの。
本当はミリエッタへ気持ちをその場で伝えたかったのだが、
思い通りに伝えられず、白く細い指先をそっと離した時はもどかしく切なくて、でも何かしらの方法でそうじゃなかったんだと伝えたくて、つい冗談めかしてしまい揶揄っているのではと疑われてしまったが、彼女が微笑んでくれるのなら今はそれでも構わない。
腕を組み、手を繫げたのは嬉しい誤算だったが、そこからは計画通り。
店の雰囲気や内装に目を留め、『本日のおすすめ』に
店も料理も、気に入って当然。
なぜならミリエッタの好みそのままに、準備をしたのだから。
「とてもお詳しいのですね! こちらは恐らく標高二千メートル帯で摘まれた物かしら」
「はい、仰る通りです(標高二千メートル帯?)」
「お薦めいただいたスイーツとの相性も素晴らしいです」
「……そうですね(スイーツとの相性? この流れは計算外……これはまずい)」
「ああでも、渋みが強いから、ミルクティーのほうが良いかもしれないわ。ジェイド様はいかがですか?」
「……(…………知ったふりをしてごめんなさい)」
ワクワクと期待に満ちた眼差しを向けられるのは非常に嬉しいが、これ以上は厳しい。
「もし宜しければ、先程のオーナーパティシエをお呼びしましょう。彼女であれば、きっと満足のいく提案をしてくれるはずです」
ジェイドはついに観念し、テーブル上の呼び鈴を軽やかに鳴らした。
ちりん!
すわ
タスケテ!
必死の目で訴えるジェイドの
バトンは無事、
緊急事態発生時の合図を決めておいて良かった。
折角のデートなのに三人で過ごすのは想定外だが、ミリエッタが楽しんでくれるなら
仲良く紅茶談議をする女性二人に合いの手を入れながら、微笑むミリエッタを嬉しそうに見つめ、ジェイドは口元を綻ばせた。
*****
「あら? 予定よりも随分と早いわね?」
観劇したにしては早い帰りに、
それもそのはず、実はあの後、紅茶談議に花を咲かせ三人で時間を忘れて
どうしましょうと慌てるミリエッタに、
「実はこのチケット、明日も利用可能なのですが、いかがでしょう? もし差し支えなければ明日改めてお迎えに上がります」
ぐいぐい来られ、
「うわぁぁぁあああ……!!」
明日に備えて早く
「もう……もうもう、反則だわぁぁ」
あんなに素敵に騎士の口付けをした上、貴女を恋い慕うなどと言われたら、ときめかない女の子などいる訳が無い。
ひとしきり
腕に手を添え褒め
実は緊張していたのだろうか、ミリエッタの手を握り締める手は少し
「歩き疲れたら、抱き上げてくれるって」
片腕は、さすがに無理だわと
緊張してろくに話せず、ジェイドに
まさか明日もデートをする事になるとは思わなかったけれど、仕方なく、といった様子には見えなかったし、
あとは婚約者探しに難航しているミリエッタに同情して、とも思ったが、そんな感じにも見えなかった。
凄く緊張したけれど、なんだかとっても楽しかったわ……。
先日の
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