第4話 先輩の家
現状『先輩の家にご入場ー』とか言っている余裕がない私。
普段ならそんな感じで自分の家に帰ってきたような感じで先輩の家へと入るのだけど――今はちょっと待て。である。
考えることが多すぎる。
とりあえず先輩に家の中へと、先輩に鍵を開けてもらい入ったところだ。
ちなみにだけど、先輩はだらしないから室内とかもゴミ屋敷――または絵を描くのが好きだから画材とかで溢れている――とか思うかもしれないけど、意外と綺麗である。
ワンルームの1人暮らしの学生が住むには何ら問題ない部屋。
画材スペースはこじんまりとあり。普通に座るところとか寝るところ。ベッドもちゃん使えるというか。綺麗。って、普通に私の部屋より――いや、それはないかな。いや――うん。大丈夫。私はたまたま今掃除していないだけ。
もうすぐ本気出す。
服が散らかっているような記憶があるが。あれは効率を考えてである。そう散らかっているのではなく。広げてある。すぐにどのような組み合わせで着ればいいかがわかるので、急いでいる時に大変便利である。
そりゃ急に先輩が家に来るとか言えば……いや、そもそも私が先輩の家に行く確率が半端なく高いからそれは気にしなくていいかな。最悪先輩を玄関のドアの前で待たせればOK。ってか、先輩を家に……あっ。無理です。準備的にってか、やっぱ先輩の家に私が行くからよし。
って、何をいろいろ考える余裕がないとか思いつつ私はいろいろなことを思っているのか。
今はそんな事より。おかしなことを言い出した先輩の看病をするべきなのに。
看病看病っと。
よし。いつも通りの雰囲気になるぞー。そうだまずは何か言おう。いつも通りいつも通り……。
「――お、お邪魔しますねー。って先輩。そうだそうだ。熱。熱を測りましょう。先輩がおかしいから私も――って、それは違うくて。とりあえずおかしい先輩の看病です」
ちょっといろいろ言いすぎた気がするけど――よし。何とか話せる。
「いや、だから――」
「お座り」
「犬じゃないんだが――」
「意味わからないこと言うってことは熱です」
「それいうと、あゆみの方がおか――」
「お黙り」
ちょっと馬鹿な?やり取りをしながら先輩の背中を押し。部屋の奥。と言ってもほとんど進んでないが。でも少し進み。2人掛けのソファへと座らし。その横に私も座るって、真面目に話せるのか?話せるか?私。隣になんか座っちゃったが。あれー?これは――ドキドキしかないのでは?あっ、先輩を見なければいいか。
「えっと――熱――って、私も座ったら何もできないじゃん!」
です。
なんでソファを選んだ私。これじゃ熱を――とかじゃなくて、落ち着いて話すというか――一緒に座ったら真面目に話す形になっちゃったじゃん。
こういう時は――そう。ベッドがあるじゃないか――。
って、ベッドはなんか違う――って、先輩の部屋の椅子がソファしかないのが問題。
あっ、そういえば基本先輩は物が少なくて、はじめて私が来た時はソファすらなく。座ると言えばベッドか床だったからね。
って、それは置いておいて。
ダメだ私の脳内なんかおかしい――って、もうこれは余計なことを考えるより話した方がいいのでは?そうだよね。先輩の家に入った。
つまり誰かに聞かれることもないと。よし。頑張れ私。先輩に勝つんだ!
――勝つとかなのか?まあいいや。
「あゆみなんか元気だな」
私が1人脳内でいろいろ考えていると、先輩。笑っていやがった。
あんたが原因でこっちは大変なのに――。
「先輩が悪いんです!」
「えぇー」
「で、先輩。いきなり何言い出すんですか?」
がんばれー私。負けるな私。強気で。いつも通りに行けー。先輩に主導権はダメだ。
――にやけてまう。
「え?あー、一緒に暮らすか」
「です。いつも――その、隅っこに居る陰キャラ先輩がいきなり何言い出すんですか」
「先輩に対してなかなかなことを言っているような……」
「ってか、今日の先輩話すぎ。いつもはボソボソ話してるじゃないですか」
「まあ、大事なこというか。まあなんだ。正体を……」
「正体?やっぱ先輩熱――」
「いや、あゆみ真面目な話だ」
先輩がちゃんと私の方を目を見て話す。
珍しい。
いつもはあまり目が合うことはないのに――先輩ボソボソキャラだから。
――もしかしてそれが演技?ってのはないよね。これは――ガチで先輩腹をくくって話しているのかな?
「えっと――はい」
私も――真面目に――って、なんか見つめ合ってる!
ダメだ。見た目はいつも通りの先輩だけど――目がマジだ。
――かっこいいな。
じゃなくてー!
「あー、その、とりあえずいろいろ見てもらった方が早いから。今から一緒に住む家に行こうかと――」
「……はい?」
えっと――この先輩馬鹿なのかな?
もしかして――家もう買ったの?
いやいや学生でそれはないだろ。
うんうん。
すると先輩が立ち上がった。
「あゆみ。手出して」
「えっ?」
「手」
「……こう?」
私は訳が分からぬまま。先輩の言う通りに手を伸ばすと――って、なんか先輩がいつもの雰囲気と――と、思った瞬間急激に眩暈が私を襲った。
――もしかすると。私に今まで騙されていたのかもしれない。
これは――私の身の危機かもしれない。
先輩実は――やばい人間……。
パタリ。と、私の意識はそこで途切れた。
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