第28話 ダンジョンA`
タヌキから、ダンジョンについて話を聞いていくと、ダンジョンマスターとダンジョンについて、驚くべきことが分かった。
なんと、ダンジョンマスターは転生するらしい。
どういうことか。
まず、ダンジョンマスターはダンジョンの外に出れない。
それはダンジョンアタッカー達も知るところである。
そして長年謎とされてきたのが、どうしてひとつのダンジョンを攻略すると、またその周辺に同じようなダンジョンができるのか。
その秘密が、ダンジョンマスターの転生にあるらしい。
転生。文字通り生まれ変わること。ぼくも一度経験したことである。
といっても彼らはぼくのように世界どころか、地域すらも移動しないようだが。
例えば、こうである。
まず、ダンジョンAがある。そのダンジョンAで、ダンジョンマスターを殺し、ダンジョンを攻略したとする。
すると、ダンジョンAは消え、攻略者達は報酬を手にする。
その後、ダンジョンAのダンジョンマスターは転生し、ダンジョンAを改良、もしくは一新したダンジョンA`を作る。
それが、ひとつのダンジョンを攻略すると、またその周辺に同じようなダンジョンができる仕組み。
ダンジョンマスターの生態である。
ただし、この転生には条件がある。
転生するには、人々がダンジョンに入場した時に得られる入場ポイントと、ダンジョン内で死んだ時に得られる撃破ポイントが必要なのだ。
そのポイントは時に、ダンジョンを改良したり、新たにモンスターを召喚したりするのにも使われる。
だから、この世界のダンジョンは、1階層が簡単で、物資も手に入りやすい作りになっているのである。
入場ポイントを稼ぐためだったのだ。
ーーーーーー
「どんなダンジョンがいい?」
一通り説明を聞き終わったぼくは、このダンジョンのダンジョンマスターであるタヌキに尋ねた。
「何でもいいよ。ポイントが稼げて、ぼくの安全が妨げられないものならね。」
タヌキは軽く言った。
何でもいいが一番困る、とはならず、ぼくは内心ほくそ笑んだ。
ぼくには前々からやってみたいアイデアが色々あったのだ。
「じゃあ、お言葉に甘えて。」
ぼくはダンジョンを設計し始めた。
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