第26話 ブタ

 翌朝。

 今日はスクールが休みである。


 こんな日はいつも森に行っていたので、今日も森に向かう。


 でなければ、探りが入った途端、森に入らなくなったな...と、なるからだ。


 しかし森に行くのはいいが、何をしようか。


 ダンジョンを作るわけにはいかないし、かといって何もしなくても怪しまれる。


 全力で楽しまなければならないのだ。


 そんなことを考えていると、川があった。


 ぼくはそれをぼんやりと眺める。


 なにか魚とか、いるかな?


 そんな風に眺めていると、上流から緑の葉っぱが流れてきた。


 葉っぱは川の途中にできた渦に飲み込まれ、沈んでしまう。


 なるほど。


 ぼくはそこら辺にあった、笹の葉に似た葉っぱを使って、舟を作った。


 そして上流から流してみる。


 舟はゆっくり流れていく。


 これで今日は凌げるな。


 ーーーーーー


 それからやっと昼になり、ぼくは家に帰って昼食を食べる。


 そしてそれからは、また、ブタノダンジョンに向かった。


 何となく、暇だったからである。


 ブタノダンジョンに入り、ブタを狩って、先に進んでいく。


 そうして4階層に入ったぐらいだろうか。


 ぼくが壁に手をつくと、その壁がスーッとすり抜けて、ぼくは壁の中に引きずり込まれた。


 すぐさま体勢を整え、引きずり込まれた方を見ると、2本足で立つ、服を着たブタのモンスターがいる。


 ぼくが慌てて、ハンマーを構えると、ブタは焦ったようにその前足を突き出し言った。


「ちょっと待った!おれは敵じゃない。」

 ぼくは変わらず、ハンマーを構えながら尋ねる。


「じゃあ何の用だ。」


 ブタは矢継ぎ早に言った。


「ダンジョン王からの伝言だ。」


「ダンジョン王?」


「そう。ダンジョン王。知らない?」


「知らないけど?」


「え?知らないのかよ。話が違うなあ...」

 ブタはそれからしばらくぼやいていたが、おもむろに言った。


「まあ、いいや。ダンジョン王からの伝言だ。

 ダンジョン王は、お前にモンスターを提供する用意がある。

 いいか?今夜、2時に、『現在お前が作っているダンジョンの裏』にダンジョンが開く。

 そこのダンジョンマスターから、モンスターをもらうんだ。


 今夜、2時だ。遅れるんじゃないぞ。

 ダンジョンができたことはすぐに観測される。

 他のやつに見つかる前に、お前が行くんだ」


「何を言っている?」


 ブタはぼくの質問には答えずに言った。

「今夜2時だ。遅れるなよ。」


 その言葉を最後に、ぼくは部屋から突き飛ばされる。


 そして先程ぼくが引きずり込まれた壁から飛び出て、その壁が開くことは二度となかった。


 部屋から突き出されたぼくはまず、周囲を確認する。


 今のを誰かに、特に尾行者に見られていたら大変だ。


 いや。隠し部屋を見つけたがトラップに引っかかったとかで説明がつくか...?


 ともかく、怪しまれることは確かだろう。


 とりあえずぼくは、前回と同じように、ダンジョンに入ってまたすぐ出るというのもまずい気がしたので、しばらく奥へとダンジョンアタックして、帰るのだった。

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