閑話 ある日のカナタ

 ダンジョンマスターになるまでのつなぎの、

 ダンジョンアタッカーとして活動を続ける内に、ぼくは幸運にもダンジョンを攻略することができた。


 ここなら今は周りに誰もいないはず。


 ぼくは出てきたダンジョンマスターの胸ぐらをつかんで、手短に尋ねる。


「ダンジョンマスターには、どうやってなった?」


「へ?」


「ダンジョンマスターには、どうやってなった?」


「わ、わかりません。気づいたらダンジョンマスターになってました」


「じゃあこのダンジョンはどうやって作った?」


「念じました。念じたら出来ました」


「念じたら?いや、待て。どうして念じようと思った?」


「生まれてすぐ、自分がダンジョンマスターなんだな、という実感だけはありました。それに従っただけです。ダンジョンマスターなら、ダンジョンを作るのは当たり前でしょう?」


「...ダンジョンマスターになる前の記憶は?」


「いえ。ありません」


「なるほど...。じゃあ、」


 と、そこで足音が聞こえてくる。


「悪いね。時間切れみたいだ」


「ヒィ!お許しを...」


「ごめんね」

 このダンジョンを攻略に来ている以上、ダンジョンマスターは殺さなければ怪しまれる。

 こいつを脅して、このダンジョンを乗っ取ることも考えたが、危険なのは否めないし、それでダンジョンを得ても、ぼくのダンジョンとは言えないので、申し訳ないが殺した。

 それに、今こちらに寄ってきている人物にバレるとまずい。



「はぁ。ダンジョンマスターになりたいなあ」

 ぼくは小さく呟いた。

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