第17話 岩塩とハチミツ

 キシャレ街から、さらに北へ。


 ぼく達はハチミツが特産品として有名な、ドレッド町にやってきていた。


 遠征合宿である。


 与えられた課題は、1週間後の帰還までに、この町のダンジョン、ハニーベアダンジョンの5階層までをクリアすること。


 ぼく達は1日でクリアして、残りの6日を観光に使ってやる、と息巻いていた。


「はい。これで登録完了です。」


 大体のダンジョンがそうだが、ここ、ハニーベアダンジョンもご多分に漏れず、中に入るには登録が必要だった。


「ありがとうございます。」

 ぼく達は係員さんにお礼を言いながら、登録所を出る。


 外にはダンジョンの入口が、ぽっかりと広がっていた。


 1階層は岩塩坑になっているらしい。


 削り取った岩塩を手押し車に乗せて、ダンジョンアタッカー達が外に出てきていた。


「じゃ、おれ達も早速...」


「ちょっと待った。」

 早速中に入ろうとしたレックスを、マリーが止める。


「何だよ。」


「まずは情報収集。当たり前でしょ?」


「でも、何も知らずに入った方が驚きがあっていいだろ。」


「1年もダンジョンスクール通ってきて、何言ってるの?」

 マリーが呆れ気味に言った。


 正確には、8ヶ月程である。


「はは。冗談だよ。冗談。」

 レックスが笑って言った。


 それから情報収集を終えて、ぼく達がダンジョンに入ったのは15時過ぎであった。


 ーーーーーー

 ぼく達が攻略するダンジョン、ハニーベアダンジョンは現在10階層まで確認されている、鋭意攻略中のダンジョンである。


 簡単なものだと、1日で制覇されるダンジョンもある中、このダンジョンは半年経った今でも、全貌が明らかになっていない、激ムズダンジョンだった。


 情報収集によると、1階は岩塩坑。

 たまに岩系のモンスターが出るが、硬いだけで弱いらしい。


「ここはまだダンジョンって感じしないな。」

 レックスが言った。


「そうだな。」

 彼の言う通り、1階層は至るところに、岩塩を採っている人がいて、ダンジョンというよりは採掘場といった感じだった。


「油断は禁物よ。ほら。モンスターが転がってくる。」

 見ると、岩型モンスターがゴロゴロと、すごい勢いでこちらに転がってきていた。


 ぼくがハンマーで打ち返そうとすると、当たった瞬間モンスターは粉々に砕ける。


「なるほど。たしかに弱いみたいだ。」


 ーーー

 そのまま、大した苦労もなく、2階層に降りることができた。


 2階層に降りると、チョロチョロと水の流れる音が聞こえてくる。


 壁や天井はツタで覆われ、ここは事前情報の通り、植物エリアのようだ。


「やっとダンジョンらしくなってきたな。」

 レックスが呟いた。


 その瞬間、ツタがムチのように襲いかかってくる。


 レックスはそれを剣で両断した。


「喋っちゃ駄目って言ってたでしょう!」

 マリーがレックスに小声で起こる。


 すると、またツタがムチのように襲いかかってきて、レックスの剣に両断された。


 レックスはマリーに、「お前も喋ってんじゃんw」とでも言いたげな、得意顔を披露した。


 ーーー

 音を出しちゃいけないというのは、中々厄介なことで、かなり神経を使い、何とか3階層への階段を見つけることができた。


 しかし事前情報の通りなら、本番はこれからである。


 ぼく達は覚悟を決めて、3階層に足を踏み入れた。

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