第15話 異例のダンジョン
通常、ダンジョンというのはそれが生じたとき、その上空に魔力の渦ができる。
これはダンジョン生成によって、空気中の魔力が大きく消費されたから起こると言われており、観測局はそれを観測して、ダンジョンができたことを知る。近年では、観測の漏れは0と言われていた。
しかし、ぼくの作った手作りダンジョンは魔力の渦などもちろん生じない。
生じないので観測もされなかった。
ぼくのダンジョンは観測局の観測から漏れたダンジョンということで、大いに話題となった。
調査局が大急ぎで調査に来て、新聞記者などもたくさん来た。
そして多くのダンジョンアタッカーが、攻略に来た。
ぼくもその内の一人、という体でそこにいた。
今は記者の人達に、ダンジョン第一発見者のひとりとして、色々話を聞かれていた。
といっても、ほとんどザックとニックが答えてくれたので、ぼくとしては話を合わせていただけだが。
そしてやっと開放されて、ダンジョンの中に入る。
ダンジョンマスターとして、ダンジョン攻略の様子を見るためである。
ダンジョンの大まかな形はこうだ。
まず、ザック達と来た時に見た、突き当たりの垂直な穴があり、その後はまた少し進んで穴があり、また少し進んで、最後は今まで降りた分、登りきったらゴールである。
なにか報酬があるわけではないが。
ダンジョンアタッカー達は、現在、最初の穴を降りたところであった。
実は降りて最初に足が着くであろう場所を落とし穴にしておいたのだが、そこは不発だったようだ。
先に入ったブタ達によって明らかにされてしまったのである。
落とし穴にはブタがぎゅうぎゅうに詰まっていて、よくわからないことになっている。
おかげで特に誰も引っかかることなく突破されてしまった。
そしてその階はブタがいるだけなので、時間はかかったがもうすぐ突破されるだろう。
大規模魔法の使い手がいたら一瞬だったと思うので、いなかったことは幸運だった。
ーーーーーー
そして、また1つ穴を降りる。
この階のコンセプトは、死角である。
ダンジョンアタッカー達はこの階に降りるとまず、人ひとりかがんでやっと進めそうな狭い壁の下を通らなければならない。
これにはダンジョンアタッカー達も苦戦したようだった。
何せそこをくぐっている間に、奥にいるブタから攻撃をされたら、ひとたまりもないからである。
そのため、魔法使い達が魔法で近辺のブタを倒して、その隙に、ひとり腕利きの強いやつが壁の奥に入って...という戦法を取っていた。
ーーーーーー
壁をくぐり抜けると、その先は少し広い空間。
しかし、ところどころに柱や壁があり、死角の多い空間である。
ここにはなんと驚くべきことに、上級ブタがいた。
上級ブタがブタたちを指揮して、死角からの奇襲を仕掛けてきたのだ。
これにはダンジョンアタッカー達もたまったものじゃない。
何人かが重症を負ったようだった。
しかし一旦位置がバレるとダンジョンアタッカー達のペースである。
彼らは上級ブタなど、狩り慣れているから、苦戦はすれど、倒せない相手ではない。
ダンジョンアタッカー達は上級ブタとその一行を狩ることに成功した。
そして困ったのが、その後どうするか。
先に続く道がないのである。
実は絶壁を登るのがゴールなのだが、そんなこと彼らは知る由もない。
そもそもここまでの道も普通のダンジョンに比べて、少しおかしかった。
普通のダンジョンはここまで穴があったりはしない。
普通は階段があるのだ。
そんな理由もあって、とりあえずダンジョンアタッカー達は撤退することにした。
しかしこの撤退がこれまた大変で...
穴は降りるのはいいが、登るのが大変である。
特に重症者は、穴にはロープを下ろしてあるのだが、それを登ることができない。
担架にロープを結びつけて、なんとか運び出したが、すごく時間がかかった。
こうしてぼくのダンジョンはほぼ攻略された。
初めて作ったにしては中々良い出来だったのではないだろうか。
トラップと絶壁はもう少し考える必要があるにしても、悪くはなかったと思う。
ただ、このダンジョンはモンスターもいなくなってもはやこれっきり。
魔物寄せポーションももうない。
次はどうするか、考えなければならない。
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