第13話 街中のダンジョン

 モンスターをどうするか。


 難しい問題である。


 森にいる野生のモンスターを捕まえて、ダンジョンの中に放り込んでもいいが、それだとかなり数が限られてしまうし、補充も大変だ。


 ぼくは解決策を探すために、街の図書館に来ていた。


 図書館といっても小さめの図書館で、生前に行ったことのある図書館と違って、床が石畳のタイルのような感じで、変な感じだ。


 そこで、

『モンスター図鑑』


『ダンジョンの変遷』


『ダンジョンと社会』


 の3冊を


 古びた椅子に座って読んだところ、魔物寄せポーションというものがあるらしいことがわかった。


 ずっと前に開発されたもので、これを使うと周囲のモンスターが寄ってくるようになるらしい。


 今回の件にピッタリである。


 しかし、現在は危険だからという理由で、製造や所有が禁止されており、最も直近で使われたのも、50年ほど前。

 テロリストが使ったというのが最後らしい。


 どうしたものか。

 そう考えながら、図書館を出て、街を歩いていると、クラスメイトのレナートに出会った。


 彼は最近、裏路地を通るのにハマっているらしい。一緒に歩いていたぼくを「そっち通っていこうよ。」などと誘い、裏路地を通った。


 裏路地、というのは治安が悪いイメージがして、今まで避けていたのだが、通ってみると意外と綺麗で、治安もそこまで悪くなかった。


 面白いのが裏路地を抜けた時で、「ここに出るんだ。」というような驚きがある。


「裏路地は街中のダンジョンなんだよ。」とレナートは言っていた。


 彼とはその後、目的地が違うということで別れたのだが、ぼくはその後ひとりで、裏路地に入っていた。


 裏路地なら何かモンスターを集めるのに役立つものは売っていないだろうか、なんて考えからである。


 ーーーーーー


 裏路地に入っては出て、時に、裏路地から裏路地に出て、それを繰り返して、


 もう空が赤くなり始めていた。


 太陽が沈みだしたのだ。


 ぼくはというと、迷子になっていた。


 裏路地を通り抜けて、また大通りに出る。


 ここはどうやら、見覚えのない場所である。


 道行く人に道を聞こうにも人はおらず、住宅街なのか店もない。

 ここは一体どこだろうか。


 とりあえずこっちかな、という方角に歩き出したぼくに、ふと声が掛かる。


「すみません、カナタさんですか?」


 周りには誰もいなかったはずなのに、そこにはフードを被った女性がいた。


「はい。そうですが...?」

 当然そんな女性に声をかけられる覚えのないぼくは、警戒しながら聞いた。


「あなたにこれを渡してと頼まれまして...」

 女性はポーションのようなものをぼくに手渡した。


「はぁ、どうも。」

 誰から頼まれたのだろう。そんな知り合いいただろうか。危険物ではないだろうか。

 そんなことを考えながら受け取ったが、よく見るとこれは、魔物寄せポーションである。

 その特徴的な、濃い緑の色はそうに違いなかった。


 ぼくは急いで顔を上げて女性に尋ねた。

「このポーションどこで...」


 しかしそこに女性の姿はなかった。


 ーーーーーー

 それからぼくは、あれは幽霊だったのだろうか、それとも何か怪しい人なのか、とにかく怖くなって、裏路地や街中を必死に走り回った。


「裏路地は街中のダンジョンなんだよ。」

 そんなレナートの言葉が、ぼくの頭の中でこだまする。


 どう帰ったのか覚えていないが、ようやく家についた頃には、ぼくはもう疲れ果てていて、すぐに眠ってしまった。

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