第10話 トラップ学
トラップ学の授業が始まった。
校内のダンジョンでの実地学習である。
といってもトラップ専用のダンジョンがあるわけではない。
あくまでも校内にある、モンスターもでる、普通のダンジョンにあるトラップを使う。
「皆さん、先日の鑑定の授業、覚えていますか?実はトラップの見分け方は、それに通ずるところがあります。魔力を感じてみてください」
先生が言った。
鑑定学の授業はそのためのものだったのだ。
今、目の前にあるのは、地面から槍のでてくるトラップ。
迂闊に足を踏み入れると、トラップが反応してグサリである。
ぼくはトラップの魔力を感じるように、トラップに感情移入する。
トラップの魔力が視えた。
トラップの魔力は、まず床表面にあり、そこから細い線が伸びて、下の槍に接続しているようだった。
床を踏むと、魔力が槍に流れ、突き出してくるのだ。
「どうですか?視えましたか?」
先生が言った。
「視えました」
クラスの優等生、エドが答える。
「この罠を回避するにはどうしたらいいでしょうか?」
先生が尋ねる。
「踏まないようにする?」
「そうですね。それも一つの手です。が、他にも色々あります。例えば、このトラップは床に乗った者の魔力を感知して動く仕組みなので、床に板を敷くと、反応しなくなります」
先生はそう言って、床に薄い木の板を敷く。
「では、レックスさん。乗ってみてください」
レックスが板に恐る恐る乗る。
トラップは反応しない。魔力を視ていたが、何にも変わらない、穏やかなものだった。
「おぉ...」
レックスが板を降りる。
「楽勝だったな」
小声で会話する。
「このトラップは、これで渡ることができますが、より難しいダンジョンに行くと、板越しでも反応してきたりすることがあります。ではそういったトラップはどうやって通ったらいいのか」
「それをこれからお見せします」
そう言うと先生はトラップの上に足を踏み入れた。
魔力が反応し、槍が突き出る。
先生はパッと足を戻してそれを避け、飛び出てきた槍をへし折った。
「わかりましたか?このように、突き出てくる槍はへし折って、再生する前に通るのがセオリーです」
「再生時間はダンジョンによって違いますが...このダンジョンは10分ほどですね」
「では皆さんやってみてください」
何人かずつ、トラップの破壊を練習する。
ぼくの番がやってきた。
トラップの上に足を踏み入れるのは、なかなかスリルがある。
ぼくは恐る恐る足を置いて、すぐにパッと戻した。
そうして出てきた槍を破壊するのだった。
ーーーーーー
また別のダンジョンに移動して、他のトラップを見る。
学校内にあるダンジョンは、超小規模のため、1ダンジョンにつき1トラップぐらいしかないのが不便だ。
今度はダンジョンの奥の方。どんなトラップかは言われていない
「魔力を感じてみてください。どんなトラップか分かりますか?」
先生が言った。
トラップの魔力は、その駆動部に多くが集まる。
例えば、先程の槍のトラップは、槍というよりはその根本の槍を突き出す仕組みの部分に多くの魔力が集まっていた。
今回のトラップはどうだろうか。
パッと見、魔力は壁に多く集まっている。しかし、そこから魔力が伸びて、横の壁の方に集まっているような...
ぼくはそれをたどっていって、ちょうどぼくの立っているところから右の壁に目をつけた。
ここに多く魔力が集まっているな...
ぼくがそこを触ってみると、壁の一部分が沈み込み、それに合わせて、先生の立っている側の、正面の壁が横にズズズッと少し動いた。
「カナタさん。よく見つけましたね。正解です。ここはボタンを押すと開くドアになっていたんですね」
「おおー」とみんなが注目してくれる。
「よくわかったな」
レックスが小声で言ってきた。
「辿っていったらなんかあった」
「へー」
「ダンジョンには、このような隠し扉やドアがよくあるので、皆さんこまめに魔力を感じることを忘れないでください」
その日の授業はこれで終わり。ぼくは家に帰った。
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