第4話 新生活
そしてぼくは、3つ目の学校、キシャーレダンジョンスクールのある、キシャレ街に引っ越してきた。
キシャレ街は、緑の美しい、思っていたよりも田舎ではないところだった。
街並みは、石造りの建物が並び、ぼくの住むことになったアパートの近くには教会があった。
アパートの決め手はもちろん森に近いことであり、ダンジョンスクールまでは少し遠くなってしまったが、その分家賃も安い、良いところである。
街に出てみると、活気のある市場があり、生活にも困らなさそうだった。
教会の前では、教会の方が神の教えを説いた、チラシを配っている。
これからここで新生活が始まるのだ。
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この街は、近くにダンジョンができたことで栄えたらしく、そのダンジョンから採れる、名産のキシャレ豚は絶品だそうだ。
ぼくもブタは好きである。ただ、転生前に食べたブランド豚は、脂っこくてイマイチな印象だったので少し心配である。
ちなみにダンジョンがどんなダンジョンになるかは、その土地で決まるらしい。
といっても法則性があるわけではなく、未だどうしてその土地にそのダンジョンができるのかはわかっていないが、一定範囲の土地の中には、似たようなダンジョンができる。
例えば、キシャレ街の近くなら、豚のダンジョンばかりができるし、前までいたあの街、マラティスの近くにはゴブリンのダンジョンが多かった。
そんなわけで、この街には豚に関する店が多く、ぼくのアパートも豚肉屋の向かいである。
ぼくは入学までの一週間、教科書を買い揃えたり、森に入ったり、ダンジョンアタッカーの資格について調べたりして過ごした。
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そしてスクール入学の日。
初登校は特別な感じがする。
桜の匂い然り、教室の匂い然り...新たな出会い然り。
ダンジョンスクールには入学式はないが、ぼくは少し早めに登校して(教室は事前に知らされている)、教室に入ってくるクラスメイト達の様子を見ていた。
ぼくの席も窓際の後ろという、それをするのに丁度良い席だった。
初めにぼくよりも年上だろうか。
ガッチリとした体格の良い男の人が入ってきた。
彼の席は一番前。
キョロキョロと何度も席を確認していたのが印象的である。
そして彼を皮切りに、どんどんと色んな人が登校してきた。
恐らく種族が違うであろう人に、もう友だちを作ったのか席につくなり色々と話をしている女性たち。
ぼくのように一人で来て、席に座っている人。
様々である。
ぼくの隣には、ぼくと年齢の近そうな青年が来た。
活発そうな子である。
「おれ、レックス。よろしく」
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やがて、教室がいっぱいになり、ムキムキの男性が入ってきた。
彼は教卓に立ったので、先生らしいことがわかった。
教室がシーンと静まり返る。
その中で先生が声を出した。
「皆さん、ご入学おめでとうございます」
「今日はまず、この学校のカリキュラムなどについて説明したいと思います」
その後、自己紹介やら、ガイダンスやらでその日の授業?は終わった。
「せっかくダンジョンスクールに入学したのですから、スクールでしか学べないようなことを学んでいってほしいです」
という先生の言葉が印象に残っている。
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ダンジョンスクール初日を終えて、アパートに帰ってきたぼくは、森へ向かった。
ダンジョンを作る場所を探すためである。
ここ最近はずっと森に来ていた。
森ではたまにモンスターが出る。
このモンスター、野生のモンスターである。
近くのダンジョンから流れ出てきたわけではない。
そんなことがないように、ダンジョンは観測されてからすぐに、厳重に管理されることになるし、もしダンジョンからモンスターが出てくるようなことがあれば、すぐさまサイレンが鳴り、現地民達の知ることとなるからだ。
ぼくがこの街に来てから、そういったサイレンは鳴らなかったし、この街に住むための物件を探していたときに、過去40年はそういったことがなかったと不動産の人が教えてくれた。
もちろん、40年より前に逃げ出したモンスターが繁殖しているのかもしれないし、この辺りに未発見のダンジョンがあって、そこから出てきたというのも考えられないことはないが、こういった野生のモンスターは世界中にいる。
つまり、ダンジョンの外でもモンスターが出現することは確認されているのである。確か、そういう研究論文も出ていたはずだ。
何せ哲学の分野では、「この世界もダンジョンなのかもしれない」なんて話題が出るほどなのだから。
もっともその説よりも今は、「大昔にダンジョンから逃げ出したモンスターが野生化した」という説の方が有力なようだが...(そう考えると、野生のモンスターもダンジョンのモンスターと言えなくもない。)
何はともあれ、森にはダンジョン産ではない、野生のモンスターがいるのである。
この森に生息するモンスターはやはりブタが多い。
次いで、鳥のモンスター。
ブタに関しては、攻撃力アップですぐに倒せるが、鳥は動きが素早く、攻撃を当てにくくて厄介だった。
そんな森を歩くのだから、安全とは行かない。
慎重に歩く必要があるため、森の探索はまだそこまで進んでいなかった。
歩いていると、また、ブタのモンスターが出てくる。
ぼくは話しかけた。
「待て。よし、待てよ、待て」
そう言いながら、先程採った、果物を投げてみる。
ダンジョンマスターになるためには、モンスターをダンジョンに配置しなければならない。
そして、ダンジョンに配置するためには、モンスターに言うことを聞かせられるようにしなければならない。
だからぼくは、こうやって仲良くなろうと心がけているのだが、モンスターは果物に見向きもせず、突進してくる。
いつものことである。
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ブタのモンスターを倒して、歩いていく。
目当ては硬い岩盤だった。
そこをぼくの、攻撃力アップで掘ることで、崩れないダンジョンを作ろうというのである。
ただ、ここらへんじゃ難しいかもしれない。
森は木の根が多いのだ。
もっと奥の方に入って、自然の洞穴を探すべきかもしれない。
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