第3話 面接試験

 多くのダンジョンスクールでは、まず実地試験を行なって、それに合格したものだけが後の面接試験に呼ばれる。


 ぼくは一応、トップ校以外のダンジョンスクールからは呼ばれたので、とりあえず第一関門は突破、といったところだった。


 ちなみにトップ校はさすがの難易度と言うべきか...。


 まず試験用のダンジョンすら、10階層あった。


 しかも、他の学校の試験は試験官が、多くて3人ぐらいで順番にやっていくのに対し、トップ校は7,8人ほど試験官がいて、一気に2,3組が試験を行うのだ。


 恐らくそのぐらいでないと、膨大な数の受験生を処理できないのだろう。


 試験内容も他のスクールと一線を画していて、まずトラップを発見・解除する試験、次にモンスターとの戦闘があり、最後に試験官との対人戦がある。


 ぼくはモンスターとの戦闘まではなんとか食らいつけていたのだが、試験官との戦闘がダメダメだった。

 いかに攻撃力アップと言えど、当たらなければ意味がないのだ。


 とまあ、トップ校の話は置いておいて、面接試験である。


 今日は最初に受験した中堅ダンジョンスクールの面接試験だった。


 この面接、恐ろしいことに事前情報が全くない。


 志望動機か、はたまた、今までに力を入れたことか、それとも、ダンジョンに関する問題か何かか。


 何を訊かれるのかとビビりながら会場に向かった。


 試験は学校の中で行われるらしく、転生前の学校とあんまり変わらないなと思ったのを覚えている。


 会場の待合い室にいたのは、ぼくを含めて15人ほど。


 思っていたよりも少ないが、時間に分かれて呼ばれるので、まあこんなぐらいだろう。


 で、待ちに待った面接試験。

 ぼくの名前、ではなく番号が呼ばれた。


 ノックして中に入る。ちなみに異世界には、ノックは3回するのがマナーなんて下らない、意味のない、バカとしか言いようのないルールはないが、慎重派のぼくは一応、3回ノックして入った。


 下らないルールだが、3回ノックするだけなら大した手間でもないので従ってやればいい。


 転生前には他にも、右ノブのときは左手でドアを開けるとかあった気もするが、そんなのはもう知らない。知りたくもない。


「失礼します」と中に入り、椅子の前で少し待ってみたが、「お座りください」は異世界でもちゃんとあった。


 もっとも、「お座りください」ではなく、「どうぞ」だったが。


 そして肝心の面接内容だが、概ね予想通りというか、予想よりも簡単だった。

 名前と志望動機、それとアピールポイントを訊かれただけ。


 志望動機は、奨学金のため、などとはまさか言えず、単純にダンジョンアタッカーになりたいから、とだけ答え、アピールポイントは攻撃力をアピールした。


 後で考えると、なぜダンジョンアタッカーになりたいのかとか、そういうことを話していない、ダメダメの回答だった。


 しかし結論から言うと、不思議なことに、ぼくはその学校に合格した。


 その他の学校についても、似たようなことしか訊かれず、(その時はなぜダンジョンアタッカーになりたいのかについても少し述べた。)


 ぼくには5校中3校から合格通知が届いた。


 落ちた2校の内、1校はトップ校であることを考えると、上出来だろう。


 受かった3校には、どうして合格だった聞いてもみたが、それを教えるとフェアじゃなくなるので言えないとのことだった。


 ぼくの予想では、恐らくだが、面接試験は確認程度で、あくまで実地試験がメインだったのだろうと思う。


 そんなこんなで、案外あっけなく合格を勝ち取ったぼくは、合格した3校から1校、選ぶことになった。


 ──────

 合格した数は3つ。


 その中から、どのダンジョンスクールに行くか。


 1つ目が今住んでいる宿屋から最も近い、都心の学校。

 設備は最も整っており、きれいな学校だが、少し狭い。


 2つ目が今住んでいる宿屋から少し遠い、郊外の学校。

 設備はそこそこだが、敷地はなかなか広い。


 3つ目が今住んでいる街から少し離れた街にある、言っちゃ悪いが少し田舎の学校。しかし設備も整っていて、敷地もかなり広く、でかい。

 ただ、ここに行く場合、向こうで住む場所を探す必要があった。


 3つの学校それぞれに良し悪しがあるが、

 決め手はどの学校が一番ダンジョンマスターになれそうか、である。


 都会好きのぼくとしては1つ目の学校が良かったが、ダンジョンマスターになる、ということを踏まえて、3つ目の学校に行くことにした。


 3つ目の学校。メリットは敷地が広い。

 そしてそれ以外にもう一つ。


 それは自然に近いこと。つまり近くに山や森があることだった。


 なぜ山や森が近くにあるといいのか。


 別にぼくが自然が好きだからではない。

 さっきも言ったがぼくは都会派である。


 そうではなくて、ダンジョンを作るためである。


 ぼくのイメージでは、通常、ダンジョンマスターはダンジョン作成を念じるだけでダンジョンを作ることができる。ダンジョンコアを使うパターンもあるかもしれない。モンスターを生み出すこともできる。


 しかしぼくはダンジョンマスターではない。


 ダンジョンは自分で作る必要があった。


 このところダンジョンマスターになる方法を探してみたが、少しも情報は出てきそうになかった。


 だからこの際、自分で穴を掘って、ダンジョンを作ってしまおう、ということである。


 その時、近くに森や山、人がいないところがあれば都合が良かった。


 そういったわけで、3つ目の学校にした。


 近くに森や山があれば、天然の洞窟を利用できるかもしれないし、人に見つからずに穴も掘りやすい。


 さらに、野生のモンスターも集めることができる。


 ぼくは3つ目の学校、キシャーレダンジョンスクールに通うことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る