第2話 中堅ダンジョンスクール

 さて、受験当日。

 とある中堅ダンジョンスクールの校庭のようなところにズラリと、受験生たちが集まった。


 年齢や人種も様々で、ここに来る動機も様々だろう。


 トップ校を受ける前の肩慣らしのためか、はたまたここが本命か。

 周りの友達が受けるから受けた、なんて人もいるかもしれない。


 そんな受験生たちが試験官の指示に従って、5人ずつぐらいでダンジョンの中に入っていく。


 ぼくはドキドキしながらそれを見ていた。

 そして、中から人が出てくるたび、自分の番が一歩近づいたと、またドキドキするのである。


 先ほど説明があったのだが、ダンジョンは小さいので、5人ごとに入って、一番下まで行って戻ってきて、その道中で試験官に「このモンスターを倒してみて」などと課題が与えられるらしい。


 受験生は全部で40人ぐらいいるので、試験官は8回、往復することになる。(ちなみに試験期間は1週間あって、毎日40人程が受験するので、この学校の受験者数は280人程度。)


 武器は借りることができたので、ハンマーを借りた。


 一番攻撃力アップの効果が出そうだし、ハンマーだと振るだけなので、ぼくでも簡単に扱えそうだからである。


 一応、パンチでも攻撃力アップの特典が働くことは、街の外の大岩を殴ってみて確認済みだが、慎重を期しておいた。


 4グループが試験を終え、ぼくは6グループ目なので、次のグループが帰ってきたら、ぼくの番である。


 今日は初めての受験。5つ受けるうちの1つ。あくまで慣らしだが、それでもやはりドキドキする。


 そうしていると、前グループの最初のひとりが顔を出し、すぐにその後ろから他のメンバー、そして試験官が帰ってきた。


 先頭の受験生の顔は明るい。

 どうやら上手くいったらしい。


「次、受験番号26番~30番!」

 そしてぼくの番が来た。


「はい!」

 ぼくの左後ろにいた女の子が一際大きい返事をする。


 ぼくの番号は27番。

 番号順なら、グループで2番手である。悪くない位置だ。


「では、まず私が中に入るので、26番、アスカさんから順についてきてください」

 試験官がダンジョンの前に集まった僕たちに言った。


 アスカさんが少し緊張した顔つきで返事をする。

「はい」


 ぼく達は少し列になって、ダンジョンの中に入っていった。


 ──────


 ダンジョンは2階層だけらしい。


 暗い、洞窟のようなダンジョンだ。


 コツコツとぼく達の足音だけが響く。


 実際のダンジョンに入るのはこれが初めてだが、意外に広く、意外に暗い。


「状況にもよりますが、モンスターがでてきたら、アスカさんから順に対処してください。危なくなったら止めますので」


 試験官がそんな事を話していると、早速モンスターが現れた。

 恐らく、ゴブリンが1匹。


「お。出ましたね。ではアスカさん、どうぞ」


「はい」


 アスカさんが前に出て、ゴブリンと対峙する。


 アスカさんの武器は槍である。

 少しの間ゴブリンとにらみ合って、一瞬の隙に心臓を一突き。


 ゴブリンは倒れた。


「お疲れ様です。では進みましょうか」

 試験官は何かをメモに書き込みながら言った。


 その言葉に、アスカさんはホッとした様子で列に戻ってきた。


 ──────

「次は...カナタさん、先頭へどうぞ」


「はい」


 今度はぼくの番なので、ぼくが先頭で進む。


 ちなみにカナタというのは、ぼくの名前だ。


 ぼくは先頭につき、もう進んでいいのかな?と思いながら、恐る恐る進み始める。


 進むペースとかこのぐらいでいいのだろうか。

 もっと警戒とかした方がいいのだろうか。


 そんなことを思いながら進んでいると、また、モンスターが出た。


 今度もゴブリンらしき、人型のモンスター。


 ここはゴブリンのダンジョンなのだろうか。


「はい。では、カナタさん。どうぞ」

 試験官が言った。


 ぼくは緊張した心持ちで「はい」と返事をしながら前に出る。


 ゴブリンはこちらを警戒したように動かない。


 攻撃力アップは任意のスキルなので、攻撃力アップオン、と意識しながら近づいていく。


 間合いの詰め方とか知らないんだけど、これでいいのだろうか。


 そんなことを思いながら、前にタッタッタッと走り、そのままの勢いでハンマーを振り下ろした。


 ハンマーはゴブリンの肩に当たり、ゴブリンがその衝撃で左下に吹っ飛ぶ。


 死んだ...?


「はい。そこまで。OKです」

 試験官が言った。


 良かったのか良くなかったのか、分からないが、無事に終わってホッとした。


 ──────

 その後、何周かローテーションしながらダンジョンを進んでいって、無事に外まで帰ってくることができた。


 評価は分からないが、終わったことには終わった。


 明日にはまた別の学校の試験があるわけだが、


 ぼくは大きく伸びをしながら帰った。

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