第22話 くーちゃんの力

 「ぐぁぁぁぁぁぁあ…」


 カリュブディスがくーちゃんに触手で捕まえられて苦しげな声を出している。


 「これならブレスを当てられるのじゃ。」


 ルージュはカリュブディスの自由が奪われているうちにすかさずブレスを放とうとする。


 よほどさっきまでの戦いでフラストレーションが溜まっていたのか嬉々とした表情をしている。


 「あんなすごい助っ人を呼んでくるなんてさすがね。

これならカリュブディスにトドメを刺せるわ。」


 後ろを見るとレインがコチラを見ながら『私は分かってたわよ』みたいな顔をしている。


 「もちろん。(思考停止)」


 何あれくーちゃんてこんなに強かったの‼︎


 カリュブディスとあんなに激戦を繰り広げられるなんて…


 「あなたすごいのつれてきたわね。

多分だけどあのでかいクラゲって

『漂海王 アプサラス』でしょ。

よく近くにあのアプサラスがいるなんて分かったわね。

しかも従魔の契約もしてるみたいだし。」


 え…

  

 全く知らんかった…


 アプサラスは漂海王の名前のとおり海の流れに任せていろんなところを漂流しているのである。


 海王種はそれぞれが自分の海域を持つ中でアプサラスだけがそれを持っておらず、しかもアプサラスは魔力探知に引っかからないため海王種の中で最も目撃例が少ないのである。


 だからレインはアプサラスを見て驚きの顔をしていた。


 てかそれよりも…


 「従魔契約なんてしてないよ。」


 俺が海王種なんて怪物と従魔契約なんてできるわけないだろ。


 この世界では魔物に名付けを行うことで従魔契約を行うことができ、これによって魔物に言うことを聞かせることができるのだ。


 便利だが簡単に出来ることではなくただ名前をつけただけでは何も起こらない。魔物を武力で屈服させたり、元から魔物との信頼関係がある上で名前付けを行うことで初めて成立するものである。

  

 しかも契約する魔物がよほど心を開いてくれない限り契約には魔力が必要で、力のある魔物であるほど名付けをする時に魔力を消費するのである。自分の魔力量よりも多くを要求されることもあり、その時は最悪いのちを落とすこともある。


 「何言ってるのよ。

名付けをしているみたいだし、何よりあなたの右手の甲に従魔の紋章が出てるじゃない。」


 うぁ、マジだ。


 かっこよさげな青色の紋章がしっかりと刻まれていた。


 どう言うこと?


 「カリュブディスを打ち取ったのじゃ‼️」


 ルージュが倒されたカリュブディスの上にのり龍化をといた状態で右手を挙げていた。

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《シーフ視点》


 「さすが七天筆頭。

凄まじいね…」


 エーギルを倒し終えたシーフは空から船にいるアスタを見る。


 「まさか他の海王種をつれてくるなんて予想できなかったな…」


 シーフが今回アスタを連れてきたのは協力して欲しかったのもあるが、アスタの実力を知りたかったのである。


 アスタが本気に戦っているのを見たことがあるのはいない。


 七天の筆頭まで上り詰めておきながら全く実力の情報がないのである。


 ニーナとの試合で実力があることはわかっていたが実戦ではどうなのか見たかったのだが…


 「予想以上だ。

アスタ自身が戦ったのを見ることはできなかったが、海王種を従魔にするくらいだ。

海王種よりも強いんだろう。

海王種に名付けをしても全く魔力が減っていないし。」


 シーフはアスタの力に驚きながら船に戻った。

       

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