第3話 『脇役』の出演~前日談~

 さて、課外授業スタートも残すところ明日にまでせまってきた。学校では早く明日にならないかとワクワクしながら待ちわびているクラスメートの熱気が教室中に満ちている、……一部を除いては。

「……」

「……」

「……」

「……」

「うむ……」

「あはは……、どうしよう。」

 元ですら困った声をあげた。ただいまの時間は明日の班別メンバーで集まり、最終確認を行っている。主にテントの設営から夕食の調理の担当、オリエンテーションの行程内容といった細かな確認……の、はずなのだか。なんだこのお通夜感は?ここだけ誰か召されたのか!?……と言われてもおかしくはない、そんな空気が教室の端には漂っている。

「……とりあえず大まかな行程は確認できたと思うから、最後にそれぞれで班分け、というよりかはオリエンテーションを兼ねたペア決めかな?それをしたいと思うんだけども。」

「「「……!!」」」

 ついに来たか!!と反応でわかってしまう。ソワソワとしだすメンバー(私と元、そして何故か女子メンバー1人を除く)。……いや、違う。ソワソワじゃない、ガタガタ震えているんだ、これ。

(……わかっている。わかっている。けど、何故なのだろう。私は悪くないはずなのに、謎の罪悪感がずしりとのし掛かってくる。)

 妙な汗が私の頬を流れた。……いや、共に瞳から流れる汗か?虚しいな……。

「みんな、落ち着いて!とりあえず深呼吸だ、深呼吸!!」

 元の一声でみんな(私と例の女子も含めて)がピタッと動きを止めた(そのお陰で私も汗と瞳からの汗も止まった)。

「落ち着いた?そしたら改めて、決めていくよ。」

 みんな(私と例の女子を除く)がコクコクと首を縦に動かす。……全員黙りを決め込んだな。

「まず、寝泊まりするテントの設営。これは全員で行うとして、次は調理。夕飯はカレーということなので、これは飯ごう係とカレー係に分けようと思います。最後に夕飯後のオリエンテーション。何をするかは当日までわからないみたいだけどペアを決めて下さい、ということです。」

「「「(コクコクコクコク!!!!)」」」

 先程の3倍のスピードで首を動かすみんな(私と女子メンバー1人を除く)。

(……首もぎれない?そんなに動かしたら。)

 赤すぎるどこかの彗星さんもビックリだろうな、こりゃ。

「僕たちのメンバーは男子3人、女子3人の6人。そしたら、調理係は2グループでオリエンテーションは男女3グループに分けようか。ちなみに基本的には全員で動くけど、調理の時は決まった2グループで一緒に行動すること、オリエンテーションの時にはそのペアで一緒に行動すること。これで良いかな?」

 元が発したこのことに、それまで黙りしていた女子2名(元君LOVE隊員『吾鷹命名』)がスッと立ち上がり、異議を唱えた。

「ちょっと待って!?元君、それ本気で言っているの?」

「もちろん、その方がもめることなく決まるでしょ?」

「いや、決まるかもしれないけど……」

「けど、それは強引すぎると思うな。」

「え?どうして?」

「どうしてって言われても、ねぇ?」

「だよね?」

 その視線がとある人物に向けられる。正確にはその人物の机を睨んでいる。……はい、私です。そりゃそうだ、私以外誰にこんな嫌々視線を向けるのだろうか。それに目が合わないように私の机を睨んでいるのを考えると、相当嫌なんだろうな。

「けど、そんなこと言ったら不公平にならないかい?」

 元がすぐにフォローに入った。

「良い?見た通り、みんなでキャンプするということだけどあくまでも課外授業。授業の一環なんだから。仲間と協力して課題を成し遂げる。その仲間がどんな人であってもだよ。」

「「……」」

「確かに、僕の決定は強引すぎるかもしれない。けど、これはみんなが誰とでも仲良くなるようにする為のことなんだよ。設営しかり、調理しかり、オリエンテーションしかりだよ。だから仲間外れは良くない。この人が嫌だから一緒にやりたくないなんて言ってたら、それこそわがままって言われるよ。」

 元が言うと正論に聞こえてくる。流石は学級委員長兼班長。先程までガヤガヤ言っていた彼女らも大人しくなっている。

「そんなわがまま言う人、僕嫌いだな……」

「「…………!!!!」」

 出た!元のイケメンオーラ攻撃。これは大ダメージ与えただろう。

「そ、そうだね!私、わがまま言っていたのかも!!」

「そうだもんね、これは課外授業だもんね!わがまま言ってちゃいけないね!!」

 いそいそと椅子に座る二人。

 ……効果絶大。これで何とかなりそうだな。




 ……ちなみにだか、これがあの日に元が言っていた例の作戦である。班長である元が仕切ることによって、いかにも自然にグループとペアを決め、私を孤立させないようにする。そこに反対意見を出す人がいたら、元曰く『イケメンオーラ攻撃』を使って、説得させるから!……と言ったのだった。まさかこんなので成功するとは……、いや多少強引だったような気もするようなしないような……。




 その後、何とかグループとペアが決まり、後は明日を残すのみとなった。

 ……ただ、この課外授業が私にとっての大きな転換点となるとは予想もしていなかった。

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