猫が内見

ふさふさしっぽ

本文

 僕は野良猫。

 そろそろ飼い猫になりたいニャ。


 というわけで、今から住宅の内見をするニャン。


 さっそく良さそうな一軒家を発見ニャ。

 入れる場所はないかニャ。やった、二階の窓が網戸になってるニャ。


 塀から屋根に飛び乗って、二階の網戸を開けて、おじゃましますニャ。

 家の中には誰もいないみたいニャ。人間の気配はしないニャ。

 ちょっと不用心だから、マイナス5点ニャ。

 さてさて内見開始ニャン。

 ニャニャーーン、ふかふかのベッドニャ。寝心地良さそうでプラス10点ニャ。ちょっとだけ寝心地を確認……ゴロゴロ……スヤスヤ……はっ、いけない、完全に眠ってしまうところだったニャ。


 ドアが開いているから、隣の部屋に行けるニャ。隣の部屋はドアじゃなくて障子ニャ。悪いけど、突破させていただくニャ。

 バリバリバリ。

 障子破るの楽しいニャ。プラス20点。畳も爪の研ぎがいがありそうニャ。ブラス10点。

 バリバリバリ。

 さて次は一階ニャ。階段を下りて……。


 一階は広い部屋ニャ。LDK、というやつニャね。走って飛び回るのにちょうどいいニャ。ソファもふかふか。プラス15点。

 もう少し高い所と、身を隠せる狭い所が欲しいニャ。僕は高い所や狭い所が好きなのニャ。マイナス5点。

 水槽にメダカがたくさん泳いでいて、おいしそうニャ。プラス10点。

 あとは……うん、この辺に僕のトイレを置いて欲しいニャ。大きいほうと小さいほうで分けたいから二個ニャ。

 ご飯の場所はこの辺がいいかニャ。トイレとはなるべく離してほしいニャ。

 それから……。


 ガチャガチャ。


 ニャ、ドアのカギを開ける音ニャ。この家に住む人間が帰ってきたニャ。


「ただいま。って誰もいないけどね……って、猫!?」


 驚いてるニャ。ひょろっとした、若い男ニャ。

 いかにもお人好しで、ちょっと気弱そうな見た目ニャ。

 僕の言うことを何でも聞きそうニャ。

 僕の下僕……いや、飼い主にぴったりニャ。

 プラス50点ニャ。


 合格、この家に決めたニャン!

 


 

 

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