第十四話 中学二年生で中二病を発症するのが至極真っ当なように、異世界で中二病は存在しえないという自論


「俺が相手をしよう」


 側近の中の一人が二階から跳び下り着地する。


「『人剣連合』、七剣人が一人。狂犬のドーグだ。ゴルグには勝ったようだが奴は七剣人のなかでも最弱。俺が奴と同じだと思うと痛い目にあうぞ」


 あ、本当にこういう状況になったら言うんだ。奴は我が~の中でも最弱っていう定型構文。まぁ、言いたくなるよな。


「一つ質問してもいいか。その『狂犬』って二つ名。誰が付けたんだ」

「この名はデント様より授かった」

「へー。ちなみにさっき言ってたゴルグの二つ名は?」

「あいつは『獰猛』だ」


 デントがつけたのか。二つ名を決めるの楽しかっただろうな。

 俺はこういう中二病の名前好きだから、つけたくなるのはすごく分かる。しかもゲームをしてた時は中二病な印象を受けたが、別にこの世界では中二病でもなんでもないからな。剣と魔法の世界で歴史の教科書にもこんな名前いっぱい出てたし。


「いいセンスだな。潰す前に二つ名をつけてもらうことにするよ」


 雑談が終わり剣を構える。しかし、その時再び二階から四人の生徒が跳び下りてきた。


「「「「お待ちください!」」」」


 彼らは俺とドーグの間に着地する。そして別々に連続して話す奇妙な話し方をした。


「ドーグ様が」「でるまでも」「ありません」「!」

「「「「私達が」」」」

「相手を」「して」「さしあげましょう」「!」


「四つ子とは珍しい」


 節ごとに別々に話す四人の生徒は容姿、背丈、剣の構え方全てが同じだった。ただ違うのは声質のみだ。

 二つ名を名乗らないということは幹部ではなく幹部候補といったところか。


「お前ごときが」「名を貰うとは」「おこがましい」「!」

「「「「私達が」」」」

「お前にぴったりの」「名前を」「つけてやろう」「!」


 四人が一斉に俺に向かって剣先を向ける。


「「「「負け犬」」」」

「なるほど。じゃあお前らは『かませ犬』だな」

「「「「ぬかせ!」」」」


 瞬時に4人が散開し俺を囲う。


「「「「【四撃の陣ダイアモンド】」」」」


 一人が正面から斬りつけてくる。と同時に次々と三方向から斬りかかってくる。避けることは……できないな。俺は剣で防ぎながら分析する。一人一人の剣術は決して優秀ではない。しかし、連携が上手なため反撃することができない。


 俺は強引に彼らと距離をとる。途中、足に剣がかすったが戦闘に影響が出るほどではなかった。

 距離をとると、両手で【桜竜斬】を放つ。しかし、四つ子は一か所に集合しそれぞれ背中を合わせて剣を構えた。


「【雨竜】」

「「「「【四壁の陣スクエア】」」」」


 大量の魔力の斬撃が四つ子に降り注ぐが傷一つ負うことなく防ぎきられる。

 斬撃を止めると四つ子が俺に話しかけてくる。


「我らが」「陣は」「無敵なり」「!」

「「「「【四撃の陣ダイアモンド】は」」」」

「効かなかったが」「この陣を」「防げるか」「!」

「「「「【四獄の陣テトラ】」」」」


 【俊脚】をして四つ子が散開する。俺を囲うように円状に走り一斉に突きを放ってきた。俺は上空に跳ぶことで避けるが、その先には四つ子の一人がいた。完全に動きを読まれてしまい攻撃を食らう――なんてことはなく、逆に空中で【風車】をあてて突き落とした。


「ぐあっ!」


 墜落した生徒が苦痛の声をあげるが、そのまま彼に振り下ろしの一撃を叩き込む。今度は声をあげることなく意識を失った。俺は残った三人に話しかける。


「君たちの弱さは四つある」


 【俊脚】で彼らの内一人に近づく。


「一つ目は完璧な連携を徹底しているが故に読みやすい」


 特に【四獄の陣テトラ】は分かりやすい。速い動きで囲むことで地上にいる人数を誤認させつつ、避けたところを空中に待機していた人がかりとる。まるで四人で一つの剣技だが、剣技なんてものは数多く出さなければならない。たった一つの剣技に人数と時間をかけてたら、当然読まれやすく対策もされる。


「二つ目は一人一人の魔力量が低い」


 俺は近づいた四つ子の一人に【一十車】のコンボをはなつ。彼は防ぎきれず剣が直撃して倒れた。これが上級生ならこうはいかないだろう。四つ子なので四人で一人分の魔力量なんだろうが、一人ずつの魔力量が少なければ各個撃破もしやすい。


「三つめは二人以上がやられると完全に戦えなくなる」


 上記同様、四人で一人の剣術なので一人でも欠けるとその剣技は使えなくなる。俺は残った二人に【桜竜斬】をはなった。四壁の陣スクエアを張ることができなかったため、魔力の斬撃が当たり血を流し倒れていく。

 俺は倒れた四つ子に最後の理由を言う。


「四つ目は単純に弱い」


 まぁ、最後にあげたことが最大の敗因だな。【風車】や【一十車】を防ぎきれていない時点で、昨日戦った幹部の生徒に比べて剣術の練度が足りていない。逆に言えば単体性能が強ければこいつらはかなり厄介な相手になる。だとしても俺はこいつらの完全なる上位互換のスキルを知っているため、彼らが強者になることは決してないが。


 すると、目の前から拍手の音が聞こえてくる。ドーグが手を叩いたようだった。


「多少はやるようだがそいつらは所詮幹部候補にすぎん。七剣人には――「そういう御託はいい」


 俺は幹部の発言を遮る。


「君たちの実力はだいたい分かった。幹部候補でこれ・・ならお前らと一人ずつ戦っても俺の勝ちが揺らぐことはない。だから全員同時にかかってこい」

「貴様、正気か」

「ああ、大まじめだ。そして大まじめにやって君たちに勝つ」

「お前の要求を飲む必要は――「いいじゃねぇか」


 ドーグは断ろうとするが、それをデントが遮った。

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