第5話 抜けがけは許しません、お嬢様!

 本来、スク水というのは学生が主に着るものであって、こんな規格外なオッパイお化けが着用することを視野に入れていないのだ。


「エッッッッッッッッッロ!」

「何をおっしゃるんですか、慶太くん。あなたが着れと言ったじゃないですかァ♡」


 はち切れる、はち切れる!

 そもそもそれはいつの時代のスク水だ⁉︎


 水着が可哀想だ、今すぐ脱いで楽にしてやれ!



 その時だ!

 勢いよくドアを開けた不埒者が突如現れた。


 何だ何だと思っていたら、ソイツは……幼少期、琉衣の専属メイドとして纏わりついていた女、カナエだった。


「お嬢様! 一体何なんですか⁉︎ なんで今更ザコ男慶太の家なんかに来てるんですか!」


 わがままダイナマイトボディの琉衣に対して、カナエはいわゆるまな板……−AAAの極貧乳タイプの細身の女の子。

 二人が並んで立つと、その格差が際立つ。


「ふん、慶太……貴様ァ! ザコのくせに琉衣お嬢様にこんな破廉恥な服を着せるとは! 万死に値する!」

「ち、違うんだよ! これにはちゃんと理由が!」

「そうよ、カナエ! これは贖罪……幼い時に犯した罪を償っているところなのよ⁉︎」


 ガガ———ンっと、分かりやすい効果音でダメージを受けたカナエは、またしても分かりやすく床に手を付き、四つん這いになって落ち込んでいた。


「な、なな……っ、そんな……お嬢様が⁉︎」


 そういえばコイツも琉衣と一緒になって俺をいじめていた記憶がある。


『慶太のザァコ♡』


 そう、あのザコザコ言っていた生意気小猿だ。

 コイツにも随分とお世話になったもんだ。


 沸々と込み上がる怒りの感情。

 そう、カナエは琉衣命の忠実なメイド……。おそらく琉衣の命令なら何でも聞くはずだ。


「おい、琉衣。カナエにもスク水に着替えて謝罪しろって命令しろ」


「なななっ!」と眉を顰めて反発したカナエだが、琉衣は「カナエ!」と一声で宥めた。


「る、琉衣お嬢様……!」

「慶太くんの言うとおりにするのです。幼かった私達は慶太くんを酷く傷つけた。それは償うべき罪……! さぁ、スク水になって謝るのです!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ! 何で私がザコ慶太の為に⁉︎」

「早く着替えろ! アハハハハハ!」


 復讐はこうでなければ!

 やはり嫌がる奴をいたぶってこその報復だ!


 さぁ、泣き叫べ! 吠え面をかけ!

 すすり泣きながらもスク水に着替えたカナエは、貧相な胸元を隠しながら琉衣の隣に立った。


「くっ、ザコ慶太……! あとで覚えてろよ!」

「くくくっ、いいザマだなァ。カナエ、琉衣の隣に立つとよりまな板が際立つなァ!」


 プライドの高いカナエには効果的面の公開処刑だ。

 きっと俺のリスナー様達も盛り上がってくれているだろう。


 ——カナエたん、最高!


 ——発展途上のまな板に挟まれたい(たとえ痛くても俺は耐える!)


 ——ハァハァシコシコ♡


 本当に盛り上がっとる!

 ある意味、琉衣の時よりも興奮されてない⁉︎

 貧乳は正義って奴か!


「くっ、この屈辱……絶対に怨み晴らしてやるからなァ‼︎」


 なんか俺も、だんだん趣旨が変わってきた復讐劇に、少し気持ちがめげてきた……。




 続く……⁉︎

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