第3話 可愛いあの子は初恋の男の子

 琉衣side……


「ねぇ、琉衣ちゃん。僕は琉衣ちゃんのことが好きなんだ」


 幼少期の思い出の慶太くんはとても可愛くて、素直に愛を伝えてくれていた。


「私も慶太くんのことが好き。笑った顔も、怒った顔も、真面目な顔も、困った顔も……全部全部好き」


 だから少しでも多く、あなたの記録を残したかった。


 だけど、何でだろう——少しずつ私達の間に亀裂が入って、離れていく。


 確かに私はどんな慶太くんも好きだと言ったけど、その中でも特に……その、ぐしゃぐしゃに泣きじゃくった顔が好き。


 私のせいで悲しむその顔が、たまらなく興奮するんですの……♡



 ———……★


 そして10年後、私達はやっと再会を果たすことができた。

 私の過度すぎる愛情のせいで、慶太くんは引きこもりになってしまったのだ。


 確かにクラスメイトの前で裸にして写真撮影は酷すぎたかもしれません……。


 でも、あの羞恥で歪めた困惑顔は堪らなく高悦していたのですもの!


 それに給食の時もそう。

 慶太くんが接種したものが欲しくて横取りしてしまったのも、今思えばやり過ぎだったかもしれませんね。


 だから私は償いの意味を込めて、慶太くんに全身全霊お詫びをする所存なのです!


「慶太くん、あなたの為なら私……何でも致しますわ♡」

「恐いわ! そんな目をハートにして近寄るなァ‼︎」


 それはあまりにも失礼じゃないですか?

 だって私は初めてお会いした時から慶太くんのことが大好きなのですよ?


 私の目はずーっと目がハートフォーリンラブですわ!


「お、おい! そもそもお前は俺の奴隷メイドだろう? ご主人の命令を無視するのか?」


 ハッと我に返った私は、仕方なく待機の命に従った。あぁ、慶太くん♡ 十年振りの慶太くんは本当に素敵になりました。


 まさかyoutubeで歌い手として活動していたなんて存じ上げていなくて、かなり歯がゆい思いをしていますが、そんなことより実物の慶太くんに会えて全身の細胞が活性化しております。


 早くご奉仕したい、ご奉仕したい。

 慶太くんの喜ぶ顔を見て、褒められて……でもたまに失敗して怒られたり、また泣かせたりもしたいですわ。


(ダメ……慶太くんの泣き顔を想像しただけで身体が熱くなって。あぁ、もし慶太くんを大事なリスナー様の前で真っ裸にしたら、どんな顔で泣くのかしら?)


 どんな企画にしようと悩んでいる姿も素敵。

 さぁ、早く! 私にご命令を!


「——琉衣。とりあえずオムライスを作ってきてくれるか?」

「はい、よろこんで♡♡♡」


 正直、料理なんてしたことなかったけど、慶太くんのご命令なら!


 私は、何だって、やってみせる——!





「………あら、何で焦げるのかしら?」


 何度焼いても真っ黒になる。

 オムライスって確か黄色でしたわよね?


「いつも私が食べているのはとても滑らかで綺麗なオムライスなのに、どうしてあんなふうにならないのかしら?」


 甘党の慶太くんの為にお砂糖たっぷりで作って差し上げたのに、おかしいですわ。


 でも、これはこれで困った顔の慶太くんが見れる!


 私はこの炭と化したオムライスを皿に乗せ、嬉々した顔で部屋へ戻った。


「お待たせしました! 慶太くん、オムライスだにゃん!」


「——え? コレが……?」


 ふふふーん、ですわ!

 さぁ、この真っ黒オムライス、慶太くんはどんな反応を示してくれるのでしょうか?


『こんなの食えるかー! ふざけるなー!』と憤怒するのも良しです!


『る、琉衣ちゃん……こんなのを食べろというの?』と泣くのもいいですわね! 興奮しますわ!


 さぁ、さぁ、さぁ!


 けど慶太くんはジィィィー……と見つめるだけで何も反応してくれなかった。


 あ、あれぇ?


「る、琉衣も苦手なこととかあるんだな。可愛いし頭も運動神経もいいから何でもできると勘違いしてたよ」


 こ、これは……同情の眼差し!


 私のことを憐んでいる⁉︎

 奴隷メイドにしてコキ使ってやるとか豪語していたくせに?


 好きぃぃー! 大好き大好き、大好きですわ!


 やっぱり私には慶太くんしかいない!

 そう確信した私は、悦んで慶太くんの困惑顔を眺めていた。



 ———……★


 さて、次回は何をリクエストされるでしょう?

 とりあえずスク水猫にゃんにゃんだー!

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