はじめての住宅の内見

千瑛路音

はじめての住宅の内見

 引っ越しはほとんどやったことがない。ほぼ自宅で生きてきた。人生において二度だけ自宅以外で住んだことがある。住宅の内見に行ったのは一度のみだ。自宅からでて、期間的に働く機会があり、その時、初めて自宅から出て一人暮らしをした。その後、仕事を終了し地元へ帰ってきたが、自宅へは戻らず一人暮らしすることにした。その時、不動産屋さんにアパートの内見をしてもらったのが最初で最後であった。


不動産屋さんはアパートから半径100メートルほどの位置にあり、入り組んだ住宅地ジュウタクチセマい道を通って、その物件を紹介した。何せ初めての事だったので、ドギマギとしてついていったものだが、その物件の第一印象は雰囲気フンイキが暗いし古いなといったものだったように思う。特に汚くしているわけでもないが、むしろ掃除はちゃんとしているようだが、なんとなくあまりいい印象は受けなかった。古い建物なので、金属部分のさびや外壁などの塗料のがれなどが、印象を悪くしてしまったのかもしれない。


不動産屋さんに部屋に入れてもらって、内見を始めた。もしかしたらいろいろ説明をされたかもしれないがよく覚えていない。ただ契約書ケイヤクショを渡されただけだったかも。とにかく中を見ると、妙にがらんとしていてこれからここに住むのかと思うと少し物悲モノガナしい気持ちになったが、ほかに内見に行く元気もなかったので即決ソッケツした。


部屋は一階にあった。庭を見ると花壇か家庭菜園カテイサイエンか、とにかく、雑草がもっさもさと生えていて、少しげんなりした。今にして思うとだいぶ甘やかされて育っていたのだななんて考えてしまう。風呂場は大きくもなく小さくもなく、ビジネスホテルのを浴槽と取り除いた感じだった。何枚かタイルがはがれていた。お湯もあまりうまく出なかったような気がする。洗濯物センタクモノはちょっとハナれたコインランドリーで行った。こうやって思い起こしてみても、自分はなかなかに大人になれなかったのだなあなんて思ってしまう。反省。




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