エピローグ「謎の女怪盗、街に現る」


 ロナン帝国、貴族街。

 そこには美術館が存在しており、文化的、歴史的価値のあるものや資産価値の高いものまで展示されている。

 かつて、悪の組織が帝国に創立されるより前、そこは非常に閑散とした場所だった。

 今ではかつての盛況ぶりを取り戻し、今では戦時中の展示物へを見に、沢山の客が訪れるデートスポットの一つとして数えられている。


 そんな美術館の上で、一人、とても胸の大きな女怪盗が息を潜めて立っていた。


「……英雄ハル。貴方の遺産、必ず私が全て……」


 そういって、彼女の姿が闇に消えていく。



 翌日、美術館に展示してあった英雄ハルの遺産『炎剣デュランダル』が盗み出されたと、大々的に報じられたのであった。





 ロナン帝国、barフェリーチェの奥にあるイルミナティカンパニーの隠しアジトで、ロアは新聞を読みながら言った。


「……いや俺、生きてるんだけどなあ?」


 その言葉に、興味が沸いたのか、飼い猫のチピを撫でまわすベアトリーチェの視線がロアに行く。


「あぁ、遺産ってヤツ?」

「そうそう。過去に俺が竜乳屋を立ち上げる時に資金が必要だったから、冒険で使っていた装備品の幾つかを売り払っていたんだが、まさかこんなことになるとはな」

「……その怪盗、相当英雄ハルにご執心よね?」


 「あぁ」と答えてロアは思い耽る。

 これまで、美術館には過去2回も盗みに入られている。

 そのすべて、被害にあった盗品は全て英雄ロアの遺産と呼ばれた装備品たちで、資産価値はなく、売っても数万ガルドほど儲かるだけの代物だ。

 資産価値が生まれるほどに強力無比で、バランスブレイカーな兵器とも言えるような武器類は全てロアが未だに管理しており、美術館にはない。


「なんなんだろうな。本当に……」

「……ヨシ決めた!」


 ベアトリーチェは、チピを撫でまわす手を止めると、肩にチピを乗せて立ち上がった。




「その怪盗、ウチにスカウトしましょう!」




「えぇ、マジぃ……?」


 そういって、ロアはベアトリーチェの思いつきに、思わず口元がゆるむのであった。







 

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