住宅の内見までの道のり
藤泉都理
住宅の内見までの道のり
内見。
部屋を実際に見て確認する事を指すが、最近では動画やオンライン会議ツールを使う内見もある。
一般的に内見という言葉は賃貸の場合に使われる事が多く、内覧は売買の際に使われる事が多いようだが、どちらのケースでも同じ意味で使われる。
内見の流れ。
予約。
不動産会社に行く。
物件へ行く。
部屋の中を確認。
不動産会社へ戻って相談。
所用時間は半日程度空けておく。
スマートフォンのほかに、メジャーや筆記用具、身分証明書なども持って行くと安心。
手持ちの家具、電化製品を採寸しておくとなお安心。
チェックポイントいち、家具や家電を配置できるか。
チェックポイントに、収納量は十分か。
チェックポイントさん、日当たりや眺望、におい、音。
チェックポイントよん、ゴミ出し場や駐輪場、駐車場などの共用部の状態。
チェックポイントご、物件周辺の環境。
当日は不動産会社の担当者が間取図を用意してくれるので、そこで採寸した数値を書き込むとよし。
内見でわからない事は何でも担当者に聞いてよし。
十二月半ばから三月中旬の繁忙期は早めに決断する心構えで。
「かあ」
大学入学に合わせての、初めての新居探し。
なんせ初めてなので、どうしたらいいかわからずにまずは内見について調べてみた。
「あとは家賃。だよなあ。やっぱ、マンションよりアパートの方が安いんだろうなあ。親から仕送りしてもらって、日本学生支援機構から奨学金を借りて、アルバイトをして。あ~~~。不安だ。授業について行けるだろうか。近所トラブルとかもあるんだろうか。角部屋がいいけど、家賃が高くなるって言うし。あ~~~。実家から通うのが一番だよなあ。何で、あんな遠い大学にしちまったかなあ~。ってそりゃあ、そこでどうしても学んでみたかったからだろう。って」
合格通知が届いた時にはあんなにも、バラ色の人生の始まりだとはしゃいでいたのに。
高校の卒業式を控えて、今。不安だらけになってしまった。
内見には両親もついてきてくれるし、安心と言えば安心なのだが。
両親だけではなく、三人の兄姉も、両親の祖父母も、叔父も伯父も叔母も伯母も、いとこも来てくれるので、すんごい心強いのだが。
「だめだ。楽しみよりも不安が。不安が勝ってしまっている。友達もいない大学生活。時間に追われる大学生活。帰ったら一人。全部をしなければいけない大学生活。節約のためにカップラーメンをすする毎日。大学とアパート、身近なスーパー、アルバイト先にしか足を運ばず。パソコンの前にかじりつく毎日。不摂生がたたって。ぎゃあっ!」
あな、恐ろしや。
だめだ。
住宅の内見を調べていたのに、どうしてこんな負の連鎖に陥ってしまったのか。
いかんいかん。
モチベーションを上げなければ。
まずは、どこの不動産にするかを決めないと。
ん。
ラインだ。
なになに。
いとこの友達が大学の近くで不動産をしているので紹介する。
えっ。マジか。いとこの友達なら安心。
いや。
いやいやいや。
だめだだめだ。
付き添いを頼んでいるのだ。
不動産探しは自分の力で何とかしよう。
うむ。
えーっと。
ぽちぽちぽちっとな。
返信。
既読はやっ。
くう、スタンプが可愛いぜ。
「よしっ!」
布団の上に仰向けに寝転がっていた俺は立ち上がり、椅子に座り直してパソコンを開き、大学近くの不動産会社の情報収集に乗り出したのであった。
(2024.3.4)
住宅の内見までの道のり 藤泉都理 @fujitori
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