第18話 ホタルvsベディゴキア②

 





 雷脚ぅ…………、なんでよぅ…………

 うぅっ…………、なんでだ!!


 ホタルは悲しくなっていた。戦いの途中に何故、悲しい声を発しているのか?

 その答えはこの状況にある。




 ホタルは頭を抑えながら転がっており、ベディゴキアも頭の一つにヒビが入っていて、痛みに怯んでいた。




 わからない。

 この状況は、第三者が今からこの場を見ただけでは何が起こったのかわからないだろう。

 わかっていることは、ホタルが雷脚を使ったこと。

 雷脚と言う技は、言葉の響きから考えれば、カミナ◯キックみたいなイメージが浮かぶだろう。だが、当のホタルは頭を抑えて転がっている。

 何故、脚ではなく頭なのか?

 衝突があった三秒前に戻るーーーー






 ホタルは勢いを付けてから雷脚を当てようと、ベディゴキアに向かって突撃していた。

 勢いも充分付いた所で、頭の一つに向かって飛び蹴りをしようと、先に雷脚を発動した。そしたらーーーー





 え?





 発動した瞬間に、ホタルが目の前に映ったのは黒い頭だった。


 ちょっ!?


 飛び蹴りの構えをする暇もなく、頭から突っ込んでいた。鈍い音を鳴らして、お互いの頭をぶつけ合った。




 ドガッ!!




 ぐべらぁっ!? うぉぉぉぉぉーーーー!!




 ーーと、冒頭に繋がるのであった。





 つまり、雷脚は自分自身のスピードを上げる技だったようだ。また攻撃技ではなかったことに痛む頭を抑えながら落ち込む。

 目論見が外れたが、当のベディゴキアは頭にヒビが入っていて痛みに怯んでいるから、その隙を見逃してはならない。

 ホタルは無傷…………と言わないが、ベディゴキアの様にヒビは入っていない。だが、HPは10も削られている。ちなみに、ベディゴキアは半分も削られていて、今は少しずつHPが回復しているといった感じだ。

 何故、ベディゴキアの方がダメージが大きいのか?


 おそらく、向こうは俺の物防の半分もないだろう。


 頭の痛みに耐えながら起き上がるホタル。HPが半分も削れた今を逃したくはなかった。

 雷砲を撃ちまくって、ララットのように石を使って動きにくくする。



 よし、雷脚なしの頭突きだぁぁぁぁぁーーーー!!



 身動きを封じたホタルは、硬い頭ではなく、人間で言うと脇腹辺りで、柔らかそうな箇所を狙って頭突きをかます。

 雷脚を使わないのは、勢いがありすぎてお互いにダメージを受ける諸刃(もろは)の剣になりそうだからだ。




 ギュゥゥゥーーーーーーーー!?




 体力は15ぐらい減っていた。あと一発か二発をかませば、勝てそうだ。


 もう一度だーーーーーーって、なんでHPが全回復するんだ!?


 再び、頭突きをしてダメージを減らそうとしたが、突然に緑の光が身を包んでHPが回復してしまったのだ。

 まるで、魔法のように…………


 魔法のようというか、魔法じゃねぇか!?

 回復魔法とか大層な能力を何故、Gの魔物が持っているんだよ!! そんなの、妖精とかが使うモンだろ!?


 ホタルは回復魔法と言っているが、魔法だと言える根拠がない。

 だから、見ただけで判断出来ないが、HPが回復したことから自己回復とは別の回復手段を持っているのは間違いない。

 頭のヒビもさっぱりと消えていて、身体中に付いている石の重さを抱えながら突進してきた。

 ホタルはその突進を避けて、どうするか考えていた。このまま戦い続けたら、こっちが負けるのはわかっている。


 逃げるしかないか!!

 出口へーーーーーーなっ!?


 出口に向かおうとしたが、そこには待ち構えていたような酸の雨が振りまかれていた。

 出口へ逃げると読んでいたベディゴキアは酸を吐き出して、雨のように出口への道を塞いだ。


 チィィィッ!!

 熱いーー、痛い痛い!!


 一滴だけだが、脚に当たってしまった。HPは4減ってしまい、ジュゥゥゥーーと焼けつけるように痛む。

 また酸の雨が来たら避けられないと覚悟していたが、ベディゴキアは酸を吐かずに突進してきた。


 ぐがぁぁぁ!!


 痛みを我慢して、突進を避けようとする。だが、無事な方の脚が当たってしまい、HPが残り1まで減らされてしまう。

 このままでは、負けて死んでしまうだろう。


 チクショウ……、俺はここまでなのか?

 まだ、一日も経ってないのに終わりなのか?


 脚はしばらく休めば、動けるようになるかもしれないが、ベディゴキアがそんな時間を与えてくれるとは思えない。

 なら、諦めるか? Gに負けて、二度目の生を諦めるのか…………って、Gに負けて死ぬとか嫌だなぁ、というか嫌だ。と考えていた。




 くっ、竜みたいな強者に負けるならともかく、Gに負けるとか嫌だ。なんか、嫌なんだよ!!

 クソ虫なんかにやられてたまるかぁぁぁぁぁ!!


 ホタルは脚の痛みを堪えて、なんとか立ち上がる。だが、立ち上がったからといっても、相手は回復持ちだから、少しずつ削るのは無理だ。

 なら、あのGをやるには、一撃であの見えているHPを消し飛ばすしかない。

 そんな方法がホタルにあるのか? それは否だ…………


 いや、一つだけあったな。効果がわからないあのスキル…………


 ホタルが思い付いたのは、まだ効果がわかってないスキル、『疾風(はやて)Lv1』だ。

 少し前に発動してみたが、効果は発揮しなかった。だが、今のホタルには他に縋る物はなかった。




 発揮してくれよ! 頼む…………疾風ぇぇぇぇぇぇ!!




 心の中で、スキルを発動させたら自分のMPに変化があった。つまり、効果は発揮したということだ。

 そしてーーーー




 ギュッ! ギュッゥゥゥゥゥーー!?




 発動した瞬間に、ベディゴキアは苦しみ始めた。こっちへ向かうことが出来ず、脚もダラリと身体を前へ投げ出していた。


 …………は? どういうことだ?

 黒い風が現れたと思えば、Gに纏わりついた途端に苦しみ始めただとーー?

 毒? ……………………あ、HPが0になった。


 ベディゴキアは凄い勢いでHPは0になって死んだ。死ぬ前にステータスを見ていたから、何が起きたのかようやく理解出来た。


 死ぬ前に、【病苦】と出ていたな。

 つまり、毒というより病気で死んだということか?



 《レベルアップしました。サイバードルグはLv8からLv9になり、スキルポイントが増えました》

 《スキルの経験値が貯まり、『解析Lv6』にレベルアップ致しました》


 《レベルアップしました。サイバードルグはLv9からLv10になり、スキルポイントが増えました》

 《スキルの経験値が貯まり、『疾風Lv2』にレベルアップ致しました》


 《進化条件を満たしました。サイバードルグから、サイバーレッグルへ進化出来ます。進化しますか?》


 ベディゴキアを倒したことで、二つのレベルが上がった。必要経験値が少なかったから、一気にレベルが上がったのだ。

 苦戦していたベディゴキア相手にスキル一つだけで、あっさりと倒してしまったホタル。


 …………色々とツッコミを入れたいが、まず言いたいことがある。




 疲れた……あんなに苦戦したのに、スキル一つでHP全損とか、ないわーーーー




 あっさりと倒してしまったことにホタルにも思うことがあるようだ。愚痴りながらHPを回復させるために、寝転がるのだった…………












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