第9話 ホタルvsララット

 


 ホタルはスモールララットがいた住処が寝床に使えるとわかり、ホームにすることへ決めた。


 あっさりとホームが見つかるとは、幸先が良いな~


 ご機嫌に後片付けをするホタル。ネズミ達の死体をホームの側に寄せて、邪魔な石ころを口に咥えて、ホームの外へ出したりしていた。死体を取っとくのは、食事が必要だとわかった時のためだ。


 うーん、まだ腹が減らないというか、全く減らないのかな?

 身体がロボットだし……いや、エネルギーはどうなるんだかな?


 考え事をしながら、ホームの掃除をしてゴミ(石ころ)をホームの外へ出そうとしたら…………




 目が合った。




 クリリッとした黒い目に、ホタルと同じ大きさの身体を持った哺乳類。

 今はホタルの目の前にいる。


 ……うん、ネズミだ。

 うぉわっ!?


 お互いが驚きで、咄嗟に下がって距離を取る。向こうも何が起こっているのか判断しきれてないようだ。

 つまり、お互いに油断があったせいで鉢合わせになる前に気付けなかったのだ。

 ホタルの場合は勘で危機を察知しているだけで正確に読み取れず、ネズミの方はここが自分の縄張りであったことに、ホタルは気配操作で気配を希薄にしたままだったので鉢合わせになるまでお互いが近付いていることに気付かなかったわけだ。


 新手か!?


 ホタルはすぐに解析を使った。


 ーーーーーーーーーーーーーーーー


 ララット


 ーーーーーーーーーーーーーーーー


 スモールがないララットだと……?

 まさか、スモールララットの進化系か!?


 さっき倒したスモールララットの進化系だとわかり、警戒する。間違いなくさっきのよりは、数段に強いのだから。

 ララットの方も自分の縄張りに敵が入り込んでいて、死体の山に子供であるスモールララットがいたことに怒り狂う。




 チュゥゥゥーーーー!!




 ララットが先に動き、凄い勢いで頭突きをしてくる。それを受けるのはヤバイと思い、横へ転がって避ける。

 目標がいなくなったことで、ララットはそのまま壁へ突撃することになったがーーーー




 スドォォォーッ!!




 壁が少し凹み、ララットの頭は傷一つもなかった。そして、ホタルは気付いた。




 スモールだった時の角がない?




 そう、ララットには角がないのだ。ララットと言う種族は、角が頭蓋骨と融合して硬質な頭を持った魔物なのだ。

 そのため、頭は岩よりは硬くて壁の方が凹んだのだ。


 壁と挟まれたら、一撃でお陀仏だな。しかし、スピードは見えなくもない!!


 既に雷牙を発動出来る準備もあり、ララットの動きを読む。頭の硬さに自信があるなら、また突進してくるはずだ。




 ーーーー来たっ!!




 突進してきたララットに対して、ホタルはカウンターを喰らわすように横脇腹へ噛み付いた。そして、雷牙で麻痺らせたーーーー




 なっ!?




 麻痺ったのは数秒だけで、動きを止めた瞬間にトドメを刺そうとしたホタルはバックステップでの体当たりで吹き飛ばされる。


 ぐぅっ、ダメージは……2減ったか。


 バックステップだったので、ダメージは少ない。だが、頭の方を喰らえば間違いなく、HPは0になるだろう。

 それよりも、麻痺った時間が短すぎる。何故と思い立つ前に、スキルレベルがまだ2だから、自分より格上の相手には効果が薄いと考えた。


 やべぇな。切ることが出来る手札はあと一つだけか……


 その手札とは、まだ使ったことがない『雷砲』のことだ。

 それで倒せるかわからないが、やらないよりはマシだと思い、また突進してくるララットに雷砲を発動した。




 雷砲ぉぉぉぉぉ!!




 雷砲は口から発射された。溜めもなく、すぐに撃てたからララットは避けきれずに脚へ当たった。




 ボシュッ! ビリビリ…………




 ーーーーへ? ちょっ!?

 ダメージ無し!? 問題はないように突っ込んでくるけど!?

 うぉぉぉぉぉっ!!


 慌てて、ララットの攻撃範囲から避けようとするが、少しだけ掠って5ダメージを受けてしまった。


 なんで!? 威力が足りないの!?


 当たった脚はまだ光り続けているように見えたから、何らかの効果を及ぼしているのはわかる。麻痺っているように見えないし、名前から攻撃技のように感じられるが……


 わからないものはわからないが、1ダメージは与えられているなら、数を撃てばいいでしょ!?

 雷砲、雷砲、雷砲!!


 ホタルはデタラメに雷砲を撃ちまくる。当たったのは、腹に一発だけで他は砕けた石などに当たり帯電していた。




 ーーそして、雷砲の効果が発揮された。




 なんと、当たった石が近くにいるララットに引き寄せられるようにくっつき始めた。



 チュッ!?



 結構なスピードで引き寄せられたようで、殴られたように石が脚や腹に衝撃が来て、ダメージを受けていた。

 それを見たホタルは雷砲の効果を理解した。




 じ、磁力の効果!?

 状態異常技に続いて、特殊技が来るのかよ!?


 雷獣のレベル2はまた攻撃技ではなく、磁力の効果を持った技であった。攻撃技ではなかったが、この状況はホタルへ有利が傾いている。




 ええぃ、嘆くのは後!

 ネズミ、死ねぇぇぇ!!


 また雷砲を撃ちまくって、ララットの周りにある石へヒットさせた。そして、全ての石はララットへ引き寄せてダメージを与え続けた。




 チュ、チュ!!




 ダメージを受けようが、石に接着されたようにくっつかれてスピードが落ちようが、突進するのをやめなかった。

 諦めが悪い敵に敬意を払って、ホタルはスピードが落ちていて、突進になっていないララットの首へ噛み付いて、全体重を掛けた体当たりを打ち込んだ。

 後ろへバランスを崩したララットは倒れた衝撃で少なくなっていたHPが無くなったようで、ピクピクと痙攣してーーーー動かなくなった。


 初めての魔物との戦いで、ホタルは勝利を得たのだった…………












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