【KAC】妖怪達の秘密

鋼音 鉄

外はただの一軒家……けど内見は?

陽谷市の住宅街に並ぶある一軒家。豪邸という訳では無く、普通の家である。そんな家にある妖怪が来る。名を大嶽丸、世界三大妖怪の一体である。人に化けた大嶽丸が家を得るために内見を開始する。


この家を紹介した業者の名は玉藻前。大嶽丸と同じく日本で三大妖怪と恐れられている妖怪である。大嶽丸は人間に化け、人間界に溶け込み始めたのは最近であるのだが、玉藻前は江戸時代から人間界に溶け込み始めたのである。だから、大嶽丸が玉藻前に頼んだのだ。


それ以外にも、大嶽丸が素直に頼めれるのは玉藻前しかいない、というのがあるのだが。他の妖怪達は三大妖怪というだけで恐怖してしまい、話にはならないし、他の三大妖怪である酒呑童子は、妖怪の中でトップクラスに性格が悪い。それで頼めれるのが玉藻前しか居ないのだ。


「ありがとうね、黄狐おうこ

「別に、礼は言わなくて良いわよ。昔から私はアンタに助けてもらってたし。それに仕事だし」


大嶽丸が礼を口にすると、玉藻前は頬を赤くしながらそんな事を言う。何百年経っても変わらない、昔のままだ、と平安時代の事を思い出す。妖怪が溢れ、人々が魔境と呼んだ時代の事を思い出す。







「アンタなら気にいると思ったけど……どう?」

「うん、バッチリだよ。流石僕の相棒だねえ」

「まあ、他の妖怪や人よりかは、分かっていると思うわよ」


大嶽丸はそりゃそうだ、と口にしながら家の中を見渡す。まだ引っ越したりはしていないので、家具などは存在していない。しかし、皿を納める戸棚、食材を焼いたりするIHは存在していた。料理好きの大嶽丸としては嬉しい限りだ。


大嶽丸は気分が上昇しており、鼻歌を歌いながら見ていると、ある部屋を見つけた。障子が貼っており、その障子を開けると木材の畳が広がっていた。


和室がある事に驚きつつも、その和室の空気を深く吸う。大嶽丸は西風の作りに慣れたものの、種族としては和の生き物なので、和風の作りが一番落ち着くのである。ポカポカとした、暖かい気持ちに包まれつつも、玉藻前の方向に振り返る。


「だから言ったのよ、『アンタなら気にいると思った』って」

「ありがとう、黄狐。君は最高の相棒だ」

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