第七話:賢者

 僕たちはいきなりかけられたその声に振り向く。


 そこには白髪白髭はくはつしろひげのお爺さんがいた。

 服装は、いたってシンプル。

 どこにでもいそうなチョッキを羽織ったスタンダードな感じだった。

 ニットの帽子も地味な色だ。



「あなたは?」


 前田さんがそう聞くと、そのお爺さんはにこにこしながら言う。


「賢者じゃよ。まあ、先代の管理人でもあるがの」


「えっ? じゃあ永谷さんのお父さんですか!?」

 

 僕は思わずそう、聞いてしまった。

 するとそのお爺さんは大きく頷き、言う。


如何いかにも、わしも永谷じゃ。今は4000号室の管理人室におるがの。この辺でドラゴンが発生したと住民から苦情があってな、通れなくなっているから早い所片付けてくれとな」


 いやいやいや、あんな危ないものをこんなひ弱そうなお爺さんでどうこうできないって!



「しかし、オーナーのお父さんで賢者ですか。これはオーナーにも伝えなければですね。しかし、何故なにゆえこんな奥深くに?」


「三年前の増築で取り残されてのぉ、更に奥にはがまだ管理人をやっているはずじゃ」


 ちょっと待て、今なんて言った?

 大家さんの永谷さんだってどう見ても五十歳以上に見える。

 このお爺さんだって、八十歳はいっているだろう。

 その更に上の代の人って言ったら、少なくとも百歳近いんじゃないだろうか?


「なるほど、しかしそうなると我々の探索もまだまだ先が長いですな」


「探索?」


「ええ、オーナーの永谷氏から依頼を受けていまして、現在確認されているのが3800号室辺りまでなんですよ。なので大家さんである永谷氏から3800号室より先について探索以来と、住民の確認を頼まれました」


 前田さんは依頼の内容を先代の永谷さんに言うと、先代の永谷さんはうなり始める。


「ううぅむ、確かに店子たなこの住民はまだまだ奥にたくさんおるからの。少なくともわしが知っている限りでは8900号室辺りにわしの父がおるから、その先もまだまだ部屋はあるはずじゃ。ちなみに8800号室からわしの代で増築したんじゃがな」


 そう言って先代の永谷さんは台帳を取り出す。


わしの管理している8800号室までの住民はここに記載されておる。しかしあ奴もちゃんと管理しておらんな。後であ奴の所まで言ってせっかんしてやらんといかんな。まったく、何時いつまで経っても子供なんじゃから」


 そう言って先代の永谷さんはフンスと起こっている。

 しかし、そんな永谷さんに前田さんは言う。


「もしよければ4000号室まで一緒に行っても好いですか?」


「ん? まあいいじゃろう。この先にはドラゴンほどではないが、面倒な魔物も住人も多いからのぉ」


「よろしくお願いします」



 こうして僕たちの探索隊に賢者が加わるのだった。


 




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