第二話:アルバイト

 東京へ引っ越して来てから早ふた月が経った。


「はぁ~、サークルどれもこれもなかなか良いの無いよなぁ~」


 僕は憧れの東京の大学で充実したキャンパスライフを過ごしているはずだった。

 だったというのは、僕の通う大学が工業系だったので女の子がもの凄く少ない。


 完全に盲点だった。


 そう言えば、田舎の高校も男子校だった。

 東京にさえ来れば彼女くらいできるだろうとたかをくくっていた当時の自分を殴りたい。

 サークルに入って何かするにも、女の子がいそうなサークルはほぼない。

 と言うか、男くさいモノばかりだった。


 なので、同じ講義を受ける、もてそうな奴と仲良くなってコンパとかに参加させてもらおうとしたら、同性愛者だった。

 危うく僕のお尻がとんでもない事に成る所だった。


「はぁ~バイトもしなきゃなぁ……」


 仕送りはぎりぎり。

 遊ぶお金なんてまずない。

 となると、バイトをしてお金の余裕を作らなければならない。


「とは言え、このご時世に下手なブラックバイトにはまると学業どころじゃないらしいからなぁ……」


 以前先輩からバイトに精を出し過ぎて学業をおろそかにして留年してしまう話を聞いた。

 流石にそれはまずい。

 何とか卒業までちゃんとしないと親に何を言われるか。

 なので、負荷がなるべく少ないバイトを探さなければならない。


 ならないのだが……


「求人広告見ても、きつそうなモノばかりだな……」


 時給の良いバイトは対外きついモノが多い。

 下手をすると、バイトなのに正社員並みの仕事を押し付けられ、精神をすり減らす羽目になるは絶対に嫌だ。

 かといって、肉体労働のバイトも厳しいのでほどほどの者を探す。


「ん? これは……」


 そのフリーの求人広告にどこかで見た名前があった。

 もう一度それを見ると、間違いがない。

 このアパートの名前だ!


「なんだ、このアパートがアルバイト募集? 一体どんなバイトだよ??」


 気になって内容を読む。


 ―― 求ム、勇敢な若者たち! ――

 当「メゾン永谷」では勇敢な若者たちを募集します。

 お仕事は至って簡単、最深部への探索と住民の確認です。

 途中に発見されたお宝は探索者の所有となりますので、腕に自信のある若者は是非チャレンジしてみてください!

 興味のある方は電話:090-〇×△6-#$%7までご連絡ください!


 思わずその内容に突っこみを入れる。


「何処まで奥が深いんだよ、このアパート!」


 確かに僕のいる部屋、301号室だって玄関まで歩いて五分の距離だ。

 前にもっと安い部屋は1280号室当たりと聞いているから、多分玄関までニ十分はかかるだろう。

 しかし……


―― 成功報酬:10万円/一回の探索 ――


 そのバイト代に思わず目がくらんだ。

 だって、奥の部屋を確認しに行くだけだよ?

 そこの住人を確認するだけだよ?

 マジ?

 それだけで一回の探索につき成功すれば10万円!



 僕は思わず連絡先に電話をするのだった。







 

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