第4話 女目線

 私がわざと寝息を立てて眠った振りをしていると、彼が訝し気な顔で私の顔を観ている。恐らく、さっきの歌が気になっているのだろう。

 思わず笑いそうになるのを堪えていると、ベランダの方から何やら物音が聞こえてきた。


(えっ、まさか泥棒? いやいや、引っ越した初日に泥棒が入るなんて、あり得ないから)


 そんなことを思いながら電気を点け、カーテンを開けると、帽子にマスク姿の男が、まさに鍵を壊して中に入ろうとしていた。


 私はビックリし過ぎて声を上げることができず、その場にへたり込んでいると、男は中に入り込み、私に向かってナイフを振り上げた。


 その瞬間、彼が私の盾になり、ナイフを食い止めてくれた。

 男は怪訝そうな様子で、再度ナイフで突いてきたけど、それが私の体に刺さることはなかった。


 男はどうやら諦めたみたいで、そのままベランダから逃げていった。

 それを見て私は体を起こし、目の前にいる彼に目を向ける。

 すると彼は、私の目を見つめながら、おもむろに口を開いた。


「あんた、やっぱり俺のこと見えてたんだな」


 



 



  

 

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