第19話 いけない遊びに誘われて

朱鷺が道場の外にでると辰次が待っていた。


おび、よこせ。持ってんだろ?」


ぶっきらぼうな口調の辰次は、めくら娘の補助用の帯をふたたびにぎった。

辰次に引っ張られるままに朱鷺はついていく。


「今度はどこへ行くのですか?」

「賭場」

「とば?」

博奕バクチしに行くぞ」

「ばくち?それは、金銭を賭けて勝負をするという、あの博奕ですか?」

「それ以外なにがあんだよ。もうどこへ観光とやらに行けばいいかわかんねぇからな。だったら遊ぶしかねぇだろ」

「遊ぶ……人は博奕で遊ぶのですか?」

「なんだよ、博奕遊びしたことねぇの?」

「はい。大丈夫でしょうか?博奕は、わたしでも遊べますか?」

「小銭一枚でも持ってりゃ誰だってできんのが博奕遊びだ。金、持ってるか?」

「はい」


朱鷺はふところから財布をとりだし、金の小判こばん数枚をチラつかせた。


「足りるでしょうか?」


ニヤリと辰次は悪い笑みを浮かべた。

持ち合わせがさほどない悪童は、めくら娘をうまく使おうと考えている。


「十分だ」

「ではぜひ、博奕遊びのご教授をお願いいたします」

「オウ、いいぜ。江戸の賭場での遊び方、教えてやるよ」


不浄の金が集まる遊びの場へ。

悪童はめくら娘を連れ、浅草寺へと向かった。

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